みずほフィナンシャルグループ系列のシンクタンクであるみずほ総合研究所は7月8日、インバウンド客数の推移についてまとめた調査レポートを公表した。
同レポートによると、相次ぐ災害の影響により2018年の訪日外客数の増加率は一ケタ台まで減速したが、2019年に入った後も1~5月の訪日外客数の伸び率は前年比+4.2%と、一桁台前半の伸び率に留まっている。全体の訪日外国人数の約半数を占める、最大旅行相手先の韓国・台湾・香港からの旅行者数が前年割れとなっていることが大きな要因となっているようだ。
韓国・台湾・香港からの旅行者数減速の主因としては、経済環境悪化や円安効果はく落などによる旅行先の分散にある。韓国・台湾については、2018年後半以降の中国経済や半導体市場の減速の影響もあり、2018~19年にかけて出国者数の伸び率自体が減速。香港も近年の景気は減速傾向を示しており、出国者数も前年比ゼロ近傍の伸びに留まっている。
為替レートが2017年末までは円安傾向で推移していたことから、韓国・台湾・香港からの訪日外客数増加の追い風になっていたが、2018年以降は韓国・台湾に対しては徐々に円高地合いが強まり、為替レート面からの追い風は期待できない状況となっている。
また、各国別にみていくと、旅行先が日本から他の国へとシフトしている傾向にあることもわかった。
香港の出国者数を行き先別にみると、2019年になってからマカオへの旅行者数が大幅に伸びているのがわかる。これは2018年10月に香港ーマカオを結ぶ港珠澳大橋が開通したことで、これまでの所要時間が大幅に短縮されたことが大きい。そのほかにも同年には、広深港高速鉄道や港珠澳大橋の開通といった、香港と中国本土を結ぶインフラ整備により、マカオ・中国への旅行者数を押し上げたと推察される。こうした要因から、香港の旅行先は、日本からマカオ・中国にシフトしている可能性が高いとしている。
韓国・台湾においては、海外旅行先が日本よりもよりコストパフォーマンスのよい、他の地域にシフトしつつあるとみている。エクスペディアが発表した韓国・台湾の「2018年の人気海外旅行先ランキング」においても、ベトナムやタイ、マレーシアなどの東南アジアの都市が上位にランクインしており、旅行者の関心が日本から東南アジアへとシフトしていることがみてとれる。しかし、韓国と日本との関係悪化や、台湾と日本との直行便の伸び悩みといった点からも今後の飛躍的な改善は難しいとみられる。
訪日外客数を伸ばすための頼みの綱となる中国人に関しては、今後さらに米中摩擦が激化すれば、景気減速へのリスクも伴う。さらに米国の利下げ観測が高まる中で、円高地合いが続けば、訪日外客数にとっては一層の逆風となりそうだ。
同レポートでは、これらの要因を背景に現在政府が掲げている2020年に訪日外国人旅行者数4,000万人という目標の達成は難しくなりつつあるとの見解が示された。加えて、インバウンドの量に固執せず、質を重視した政策をすべきとの見方も示された。
現在、インバウンド消費の多くは、東京や大阪、名古屋といった三大都市圏および福岡、札幌などの地方中枢都市に集中している。今後は地方圏でのインバウンド消費を活性化させ、その恩恵を日本の隅々まで波及させること、さらに、長期滞在型の旅行客を誘致することで支出単価の引き上げを目指していくことを提言している。
【参照ページ】2020年のインバウンド客数 目標達成に黄信号
【参照ページ】人気急上昇の旅行先は韓国やロシアのあの都市!? エクスペディアが発表!2018年の人気海外旅行先ランキング
(Livhubニュース編集部)
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