球場からお寺までユニークなスペースを簡単にネットで1時間単位から貸し借りすることができるマーケットプレイス、「スペースマーケット」を運営する株式会社スペースマーケットと、民泊・旅館・ホテル運営代行サービス「ファミネクト」を運営する株式会社ファミリアリンクは2月26日、住宅の時間貸しに関する取り組みにおける業務提携を発表した。
今後、ファミリアリンクは物件オーナーに対して民泊だけではなく時間貸しの提案を行い、スペースマーケットへの物件掲載や運用の代行サービスを提供していくという。
住宅宿泊事業法の施行まで残り4か月を切ったこのタイミングで、国内最大の部屋貸しプラットフォームと民泊運用代行最大手の事業者が手を組むというのは非常に興味深い。
新法下の民泊では年間180日という営業日数制限もあるほか、自治体による上乗せ規制によってさらに営業日数が限定されるケースも多い。また、消防設備や管理規約などの問題でそもそも民泊が運用できない住宅が多いのも現状だ。こうした課題を抱える民泊の代替手段として注目を集めているのが「時間貸し」という新たな不動産活用手法だ。
スペースマーケットによると、住宅スペースの時間貸し利用は前年同月比で3倍以上で増えており、撮影や会議、女子会、ママ会、パーティーなど様々な用途で人気が高まりリピーターも増加しているという。
そこで、今回Livhubではスペースマーケットの代表取締役を務める重松大輔氏、ファミリアリンクの代表取締役を務める柏木祐介氏のお二方に住宅スペースを民泊ではなく時間貸しにする魅力や時間貸しのリアルな現状についてお話を伺った。
インタビュー
Q:住宅系スペースのレンタルが増えているが、その背景となる要因は?
重松(S):今まで居酒屋やカフェで行われていたことが住宅系のレンタルスペースに転換されて来ていると感じます。また、ホームパーティの人気が高まっていることも一つの要因として挙げられます。誰かの家でやる場合には家主に負担が偏りますが、サードプレイスとして住宅系のレンタルスペースを借りれば、準備も片付けもみんなで分担することができます。このプロセスも含めて楽しめる点が好評ですね。
一方、スペースを貸し出すホスト側の目線に立つと、「空き家を活用したい」「副業として自分が住んでいる家の空いている時間を活用したい」「賃貸などではない新しい不動産活用に興味がある」など様々な理由で時間貸ししたいというホストの方が増えています。
Q:住宅系スペースのレンタル利用は、どのような曜日・時間帯が多いか?
重松(S):平日の昼間、土日の昼間の利用が多いですね。11時の開始が特に多くなっています。キッチンを利用してランチを作るママ会や女子会などによく利用されています。
Q:特にどの地域(東京、大阪など)の住宅の人気があるか?
重松(S):強いて言えば、東京23区、大阪のなんば・心斎橋、京橋・淀屋橋です。ただし、アクセスが悪い場所や駅から少し離れている場所でも、ユニークだったり設備が整っていたりする住宅は人気があります。
宿泊はそこを拠点としてどこかに行くことを目的とすることが多いですが、時間貸しの場合はそこで数時間過ごすこと自体が目的なので、その場所の価値が高ければ、多少はアクセスが悪くても、多くの方に利用されています。地元の方による利用も多いため、繁華街から離れたベッドタウンのようなエリアでも人気です。
Q:借りる人はどのような人が多いのか?
重松(S):先ほどお伝えしたように女子会やママ会などの利用が多いので、お子さんをお持ちのお母さんや女子大生の方が多く利用をしてくれていますね。個人・法人という切り分けで行くと住宅の利用は個人の方が多くなっています。
Q:どのような住宅の人気があるのか?
重松(S):女子会やママ会の利用は写真を撮影してSNSに投稿という流れがあるため、女性受けする内装の住宅は人気が出ています。また、ママ会では子連れの場合も多いため、赤ちゃんが寝転べる、子供用の食器があるなど、子連れに優しい設計になっていることなどもポイントです。キッチンで料理をするケースも多いため、キッチン設備や食器の充実度も大事です。
Q:過去にあったユニークな利用途は?
重松(S):著名なYoutuberの方々がハロウィンパーティーを開催して撮影会を行ったり、夏の風情を感じる古民家でモデルの方が浴衣撮影会を行ったりといった事例がありますね。当日の様子はウェブでも公開しています。
Q:1時間あたりどのぐらいの金額が相場か?
重松(S):2,000円~5,000円/時間あたりが多く、大人数で利用できる住宅は高い金額になっています。利用者が割り勘をしたときに1名あたりの金額が1,000円~2,000円になる範囲での利用が多いですね。
Q:時間貸しだけで運用した場合、月間どの程度の収益が期待できるか?
重松(S):民泊と同様に収益は物件によってさまざまに異なりますが、ホスト登録のページでは参考までに時間貸しだけの収益例を公表しています。月次収益が80万円を超える代々木のデザイナーズ物件や、60万円を超える古民家などもあります。
Q:今回のサービスでは、具体的にどのようなアドバイスがもらえるのか?
柏木(F):物件の紹介からインテリアコーディネート、リノベーション、予約管理、入室管理、清掃管理、スペースマーケットでの時間貸しの利用データやノウハウなどを活かしたアドバイスをトータルに行わせていただきます。
Q:今後の意気込みについて教えて下さい。
柏木(F):2018年6月に予定されている住宅宿泊事業法(民泊新法)施行により、合法的に民泊運用することが出来る一方、民泊新法によって定められた条件や基準をクリアできない既存民泊施設が、全国で数万件になると言われています。
全国で累計1200施設以上の点在する民泊施設を開発し、リノベーションから清掃までワンストップサービスを提供してきたファミリアリンクは今まで培ってきたノウハウを活かし、スペース貸しへの転用や新規運用のアドバイスやワンストップ運用サービスを提供します。
全国に点在する施設のリノベーションから清掃までをワンストップで運用している運用リソースやノウハウを基に、全国の主要都市で施設の時間貸し運用支援ができることがファミリアリンクの優位性です。また、利用者と24時間365日でリアルタイムなコミュニケーションを実施できることから時間貸しの利用者の満足度を向上させることができると考えています。
ファミリアリンクでは、民泊転用から時間貸し転用への運用について2018年末までに運用物件数250件、売上5,000万円を目指します。
重松(S):今回の業務提携により、民泊撤退するホストの受け皿になればと思っています。また今後セミナーを開催することで、時間貸しのメリットを伝えて行きたいと思っています。
時間貸ではなく宿泊事業の「スペースマーケットSTAY」の取り組みも別途準備中です。3月に別途発表させていただく予定です。
まとめ
重松氏のお話からは、宿泊を前提とする民泊だとあまり収益が期待できなかったり、そもそも住居専用地域として営業が禁止されていたりするエリアの物件でも、内装などを工夫してターゲットのニーズに合った物件づくりをすることができれば時間貸しだけで民泊と同等か場合によってはそれ以上の収益を挙げられることがよくわかる。
なお、スペースマーケットでは2月27日(火)18:00からスペース貸しに関する説明会を開催予定だ。時間貸しという新たな不動産活用方法に興味があるホストの方はぜひ参加してみてはいかがだろうか?
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(Livhub編集部)
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