「Okie-dokie(全てはオッケー)」が合言葉! ペルーで体験した、みなアミーゴの精神とリジェネレーションの旅路

南米、ペルーの歴史的首都であるクスコ、その意味は「へその緒」、または「世界の中心」であり、インカ帝国の首都であると同時に、当時のアンデスの世界の最も重要な聖なる都市である。こんな歴史的な聖地でもあるクスコの街に着いて、まず体験したこと、それは「人類みなアミーゴ(友達)」の精神だ。

多くの人々と出会いで溢れるクスコ、アルマス広場

人類みなアミーゴ(友達)、クスコの街

クスコの街では、友達の友達は友達でその友達も友達で…みんなアミーゴの世界なのである。現地で知り合った友達の友達の友達の家に1週間以上滞在させてもらいながら、親友のように、家族のように受け入れてくれたり、ご飯をみんなで囲んで食べて、ローカルマーケットでは知り合った方がすぐに歌を歌ってくれたり、ご飯をサービスしてくれたり….。

ローカルマーケットでの出会い、サービスをしたり歌を唄う友人

また、「携帯が壊れた」「病気になった」など、何か困ったときに友達の友達を紹介されるが、大丈夫なのか心配になって聞いてみると、「いや友達だけど?」と切り返されたりする。それぐらい友人を信頼しているのである。しかしクスコの街は不確実なことも多く、トラブルも多く生じるが、仮に何かトラブルがあったとしても、どこかで他の友人がカバーをして解決されることもある。

このようにクスコの街は、非常に不確実な世界だが、全ては問題はなく、広い信頼でまわっている。彼らの合言葉は「No problema(全く問題なし)」と「Okie-dokie(全てはオッケー)」。

広く人を受け入れられる背景には、全く異なる価値観の人たちに対してのオープンさがある。「異なるものを、異なるものとして受け入れてくれている心のひろさ」が備わっているのである。また、「不確実(わからない)であることを受け入れ、信頼する」ゆとりが彼らにはある。その背景にあるアンデスの伝統的な文化では、異なる文化や価値観を尊重し受容してきた背景がある。

太陽神殿前の広場、クスコの都市の真ん中でアンデスの儀礼は今でも行われる

クスコの街では家族や親密な交友関係を超えた広い信頼に基づく友人関係が街の豊かさを支え、そして街を楽しさと気楽さと、助け合いで溢れた場所にしている。

そして、このような交友関係は、ときに家族を超えていくだけでなく、世代を超え、そして生死も超え、さらには地球へと開かれていく。

友の輪は家族を超え、世代を超え、生死を超え、そして地球へと広がっていく。アンデスのワイプン山での家族との暮らし

クスコからバスで1時間ほどいった標高4200mのアンデスの山の上で家族と過ごした。ここもまた、友人の紹介で友人となったある家族のもとに滞在させていただいた。

アンデスのワイプン山

彼らは、アンデスの文化を守りながら、7000年前から続くキヌアの種や、山の野生の種やその他のアンデスの土地の種を保全している。具体的には、土着の種を保全している「シードハウス」を通じて、若者の間で生物多様性、アイデンティティ、社会文化の保護を促進し、地域の家族の食料の安全や文化的価値の継承の支援を目的として活動している。

私は、種を収穫し丁寧に種を選別していく作業を手伝う中で、一粒の種の内に、また日々の暮らしの中に、長い年月を重ねて築かれてきたアンデスの文化とそして文化を支える大地と地球への敬意を感じる日々だった。

アンデスの「シードハウス」では土着の種の保全をしている

そして、何よりも驚いたのは、7歳の女の子が話す言葉である。彼女の家には、2つの祭壇がある。一つはご先祖様のためのもの。もう一つは、彼女の家族がかつてお世話になった「マミータ(スペイン語でママの意味、彼女は血縁関係を超えてこの言葉を使っている)」と呼ばれる、今は亡き友人のためのものである。

祭壇の上にあるマミータの骸骨

祭壇の上にある骸骨に関して彼女はこう言う。「この祭壇には、いつも私たちを助けてくれた「マミータ」と呼ばれる骸骨があります。彼女はいつも私たちを助けてくれました。彼女が亡くなったとき、私たちは彼女の骸骨を受け取りました。私たちは互いに助け合う家族です。私たちは食事や朝食の前に地球に感謝します。また、私たちは私たちの心の中にいつもいる祖先や「マミータ」のために2つの祭壇を持っています」彼女はこう続ける。

「マミータは、色々不自由を抱えていたおじいちゃんやおばあちゃんのために私たちを助けてくれた人で、彼女は彼らができなかったことを手伝っていました。彼女は若い頃から人々を助けるのがとても得意で、みんなが幸せになれるように手助けをしていました。彼女が年をとるにつれて、散歩中の彼女はより幸せそうでした。彼女が亡くなった後も、みんなが少しずつとても幸せになり、彼女を心に刻んでいました」

幼い少女は、このように、詩的な言葉を用いながら、地球、ご先祖様、そして「マミータ」と呼ばれる今は亡き友人がいつも共にいて、そして日々感謝を捧げていることを伝えてくれた。

血縁の家族でない彼女の遺骨を受け入れる背景にはアンデスの伝統的な文化の中にある、アイユ(Ayllu)と呼ばれる、血縁を超えた互酬的な共同体がある。アイユは、文化や宗教が共通の祖先の子孫のグループで土地を共有しおり、各土地ごとにアイユがある。今は亡き彼女と、幼い少女の家族は血縁を超えたアイユによって結ばれていたのである。

このように、アンデスの文化において交友関係は、人間だけでなく、地球全体にまで広がり、また生きている人だけでなく、今は亡き人にまで広がり、形の見えないいのちの宝物が心の中に刻まれ、世代を超え、血縁を超えて受け継がれていく。

私たちは気候変動などの地球危機に直面する中で、つい外側に解決を求め、行動しようとする。しかし、立ち返ってみれば、地球の危機なのではなく、私たち自身、人類自身の危機なのである。

それは人と人の間での信頼関係が破綻し、私たちと自然界やさらには今の世代まで受け継いできた祖先とのあいだの関係性の破綻を意味する。私たちは生きることのルーツに立ち返り、これらの関係性を繋ぎ直し再生(リジェネレーション)していく必要がある。

南米、ペルーでは、上述したように私たち自身のリジェネレーションの可能性を引き出してくれる出会いと気づきがたくさん待っているだろう。訪問する土地でどのように他者や、あるいは祖先や自然界と関係性を育んでいるのかということに意識を向けながら旅をしてみると、その土地で育まれてきた文化を自分ごととして捉えることができるようになる。

ペルーの人々は特に土地の祖先や自然との繋がりを日々大切にしているので、この地を訪れた旅人にも、たくさんのリジェネレーションの機会が訪れることだろう。ぜひ一度ペルーを訪れてみてはどうだろうか。

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Asato Nakamura

人と地球の医師、地球が学びの場、ペルーに滞在しながら、水から学ぶWaterVersitiesと世界中の伝統医学やシャーマニズムを繋ぐアライアンスを立ち上げ中。日々詩を描き、音楽という世界共通言語を奏でている。 人と水の関係性、プラネタリーヘルス、伝統医学やシャーマニズムの研究をしている。福井大学医学部医学科を卒業、京都大学総合生存学館博士課程在学中。鎮守の森研究所研究員として壱岐島で研究活動をしている。