初心者が田舎の家で民泊を始める際の注意点は?手順や注意点を解説

相続などで引き継いだ田舎の家の運用手段として、民泊を検討している方も少なくないのではないでしょうか?

しかし、田舎の家で民泊投資を始めるならば、比較的少額の初期費用で始められたり、田舎ならではの旅館業法の規制緩和も受けられることがあります。

本記事では、投資初心者の方が田舎の家で民泊を始める際の手順と注意点について解説していきます。

1.民泊を始める手順とシミュレーション

民泊投資を始める手順の最初の段階として、まず、民泊の事業としての収支バランスがどれぐらいになるのか、シミュレーションをしてみることが重要です。

その後、民泊の形態を決め、選択したそれぞれの形態で法令上の開業手続きを行い、開業手続き完了後、実際の運営を行っていくことになります。

収支のシミュレーションは、主に、次の3つの段階で検討する必要があります。

  • 初期費用
  • 管理運営費用
  • 民泊料収入とのバランス

それぞれについて、内容を詳しく説明していきます。

1-1.民泊投資を始める初期費用

田舎で民泊を始めるのであれば、戸建てをリフォームして開業するパターンが最も多いケースです。物件を所有していない場合、民泊に適した物件を購入あるいは賃借するところから始めます。

戸建てを購入したとすると、田舎の場合は数百万円程度で民泊利用可能な物件が取得できる可能性があります。

民泊投資にかかるリフォーム費用には、法令上、開業に最低限必要な消防設備、火災報知器や誘導灯などの設置にかかる費用と、宿泊施設としての改装費用、家具・寝具等の設置費用があります。各業者に問い合わせるなどして、見積もりを取りましょう。

また、所有している物件で始める場合、初期費用には数十万円から100万円程度を見積もっておくとよいでしょう。

1-2.民泊物件を管理運営する費用

住宅宿泊事業法の民泊には、宿泊者の管理やカギの管理、清掃、備品の管理、洗濯などの管理運営業務を日々の業務として行っていく必要があります。

家主同居型の民泊形態であれば、オーナー自身がこれらの業務をすべて自分でこなしていくことも可能です。

しかし、家主同居型であっても6部屋以上ある場合や、家主不在型の場合は、住宅宿泊管理業者に業務を委託しなければならないため、委託費用を見積もる必要があります。完全委託をする場合、民泊料収入の20%程度の代行料が相場となります。

1-3.民泊料収入とのバランス

民泊料収入の見積もり、設定は、周辺地域の既存旅館などの宿泊料相場から決めることになるでしょう。体験型民泊のような付加価値があれば、それを加味して民泊料金を高めに設定できる可能性があります。

ただし、住宅宿泊業法の民泊では、年間180日の営業日数制限の範囲での民泊料収入になります。この際、民泊料収入の設定は、年間の管理運営費用とのバランスを考慮して利益が残るようにする必要があります。

そのうえで、利益によって初期費用がどれぐらいの期間で回収できるのかシミュレーションを行いましょう。シミュレーションは宿泊料相場より厳しめに行い、それでも運営管理費用と初期費用との収支バランスがプラスになるように投資計画を立てることが大切です。

2.民泊の形態を決め、届け出の手続きをする

民泊の形態には、大きく分けて、2つの形態があります。それは、住宅宿泊事業法による民泊と、旅館業法による民泊です。

住宅宿泊事業法による民泊とは、2018年6月に施行されたいわゆる民泊新法によるもので、一般住宅であっても都道府県知事等へ届出という簡便な手続きで宿泊事業が可能になる制度です。

多少の追加設備条件はありますが、基本的には、台所、浴室、便所、洗面設備があれば、年間180日以内で住宅宿泊業が可能になります。

これに対し、旅館業法による民泊は簡易宿所として都道府県知事等の営業許可を得て、営業することになります。客室面積要件や建築基準法、消防法などの規制を受けるのが原則になります。

ただし、田舎の民泊の場合は農村休暇法によるいわゆる体験型「農家民宿」の許可を受けることで、これらの規制がかなり緩和され、初心者でも取り組みやすくなっています。

住宅宿泊事業法による民泊と、旅館業法による民泊、それぞれ手続きの手順について詳しく見て行きましょう。

2-1.住宅宿泊事業法の民泊を始める手順

ここでは、住宅宿泊事業法(以下、民泊新法)の民泊の届出をする手続きを紹介します。

まず、民泊を検討している地域が上乗せ条例を制定していないかどうかを確認します。各自治体によっては、条例を制定して民泊の届出について、民泊新法による規制よりも厳しい規制を設けているところもあるためです。

次に、届出をする住宅に、台所、浴室、トイレ、洗面設備、の4つの設備があるかどうかを確認します。確認できれば、民泊新法の民泊可能な住宅としての設備を備えていることになります。

届出には、住宅の図面が必要です。台所・浴室・トイレ・洗面所設備の位置、住宅の間取り・出入口、各階の別、居室・宿泊室・宿泊者の使用する部分の床面積、非常用照明器具などの安全設備の内容、が記載されている図面を準備します。これらは手書きでも構いません。

民泊施設として運営するとなると、消防法における「防火対象物」基準が原則になるため、消防設備、安全設備についても確認、設置が必要になります。各地方自治体の届出窓口に適宜確認し、進めていきましょう。

実際に届出をする際、必要になる書類は、主に次のようなものになります。

  • 届出申請書類(各地方自治体様式)
  • 住宅の登記事項証明書
  • 住宅の図面
  • 消防法令適合通知書
  • 身分証明書
  • 住宅宿泊管理業者から交付された書面の写し(管理委託する場合)
  • 転貸の承諾書(賃借物件の場合)
  • 法人の定款、法人の登記事項証明書(届出者が法人の場合)

※国土交通省「住宅宿泊事業者の届出に必要な情報、手続きについて」を参考

前述した通り、民泊の規制条件が各自治体によって異なるため、届け出の必要書類も異なる可能性があります。該当エリアの自治体に問い合わせる等、事前に確認をしておきましょう。

2-2.旅館業法の民泊を始める手順

旅館業法の簡易宿所として民泊を開業する手続きを紹介します。

ここでは、田舎でも比較的検討しやすい農山漁村余暇法における「農家民宿」として緩和された要件の下、行うものとします。

農林漁業体験民宿業者の登録実施機関の登録を受け「農家民泊」を行うには原則として農林漁業者であることの証明書が必要ですが、農林漁業者と連携する場合も登録可能です。

農林漁業者であることの証明書、簡易宿所として開業を考えている建物の図面を用意して、都道府県の窓口に相談に行きます。各法規制との調整が必要になるため、それぞれの法令に則った手続きを行う際に、各担当部署と相談することになります。

実際の旅館業法の許可申請の窓口は、都道府県(保健所を設置する市、特別区)の保健所となり、許可取得にあたっての条件は都道府県等によって異なります。そのため、具体的な手続きについては各都道府県等に確認する必要があります。

ここでは旅館業法の民泊を始めるにあたり、主な申請方法や必要書類について解説します。(農林水産省「農家民宿関係の規制緩和」を参照)

旅館業法許可申請

まず、旅館業法の簡易宿所営業許可を得る手続きについては保健所に申請し、風呂、洗面所、トイレなどを法基準に適合するように相談します。農家民宿では、客室面積の33平米基準が緩和され、それ未満でもよいこととなっています。

この際、必要な書類は主に次のようなものになります。

  • 旅館業許可申請書
  • 水道水使用証明書
  • 図面
  • 消防法令適合通知書
  • 建築確認通知書・建築物検査済証の写し
  • 衛生管理に係る計画書
  • 農業漁家民宿確認書写し
  • 法人の定款又は寄付行為の写し(法人の場合)

飲食店営業許可申請

食事の提供を行う場合は飲食店営業許可も必要です。同様に、保健所に申請し、必要な構造・設備を満たすようにします。

構造は、調理室が住居・客室等と区画されていることが必要であり、設備は手洗設備、洗浄設備、殺菌設備、温度付き冷蔵庫の設置が必要とされています。

そのほか、食品衛生責任者も設置しなければなりません。これらも、農家民宿では一部、要件が緩和されています。

これらの申請の際に必要な書類は主に次のようなものになります。

  • 営業許可申請書
  • 営業設備の構造を記載した図面
  • 食品衛生責任者設置届出書
  • 農業漁家民宿確認書写し
  • 法人の定款又は寄付行為の写し(法人の場合)

都市計画法との調整

開業しようとする物件が市街化調整区域に所在している場合、原則、民宿の建築や既存の住宅を新たに民宿に変更したりすることは禁止されています。

民宿を開業しようとするときは、各市町村開発許可担当部署から都市計画法上の開発許可を受ける必要があります。

消防法令への適合

万一の火災発生に備え、消防設備等の設置や避難設備および防災管理体制を整える必要があります。簡易宿所への用途変更あたり、所管消防本部の確認をとります。

民宿用面積が50平米以下で、住宅用面積よりも狭い場合は、住宅用火災警報器の設置のみでよいとされています。

しかし、それ以外の場合は、基本的に、防火対象物使用開始届出書の提出、防災物品の使用、誘導灯・誘導標識の設置、自動火災報知設備の設置、が必要になります。

建築基準法上の申請

民宿は原則として建築基準法上、「旅館」として扱われますが、住宅の一部を農林漁家民宿として利用し、客室の床面積が33平米未満であり、避難上支障がない場合は旅館に該当せず住宅として取り扱われるため、特に申請手続きは必要ありません。

建築担当課で、避難上支障がないかどうか、図面等で確認するのみとなります。

3.民泊の運営を始める

民泊新法、あるいは旅館業法上の開業手続きが完了したら、いよいよ実際の運営準備となります。

シミュレーションした投資計画に基づき、家具・寝具・アメニティのセットアップを行います。田舎の家で初心者が初期費用を抑えて民泊を始めるなら、一般住宅に備わっている最低限の設備で始めてみましょう。

ただし、コロナウイルスによる影響が終息した後のインバウンド需要も見込んで、英語表記をしたり、WIFI設備を設置したりすることも大切です。多言語対応のアクセスガイドやハウスマニュアルの作成も怠らないようにしましょう。

物件の写真撮影を行ったら、民泊仲介サイトのAirbnbやHomeAway、Booking.comなどに登録しましょう。また、これらの運営準備を自分で行うのが難しいと思ったら、民泊運営の代行業者を活用しましょう。

4.民泊投資で気を付けたい注意点

初心者が田舎で民泊投資を始めるには、次のような注意点があります。

  • 上乗せ条例規制
  • 営業日数制限
  • 民泊は開業後も報告が義務付けられる
  • シミュレーションは慎重に

4-1.自治体ごとの上乗せ条例規制

住宅宿泊事業法では、届出を出して基準を満たせば、地域を問わず民泊を運営できることとされていますが、各地方自治体では、上乗せ条例を制定して規制している場合があります。

このような自治体では、民泊を行うことのできない地域があったり、近隣住民への周知を求めるなどの行為規制を設けたりしていることがあります。必ず、民泊投資を検討する前に自治体ごとの条例規制を確認するようにしましょう。

4-2.住宅宿泊事業法の営業日数制限

住宅宿泊事業法の民泊では、年間180日の営業日数制限があるので注意しましょう。営業日数制限を避けたい場合、簡易宿所を選択するようにしましょう。

田舎であれば、農村休暇法における「農家民宿」の要件緩和を受けることができる可能性があります。

4-3.民泊は開業後も報告が義務付けられる

住宅宿泊事業法では年間を通して2カ月ごとに、宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別宿泊者数の内訳、を都道府県知事に報告するよう義務付けています。

これらの報告を怠らないように注意しましょう。

4-4.投資前のシミュレーションは慎重に行う

民泊投資は宿泊料を対価とする事業であり、コロナショックのように宿泊ニーズの減少リスクも抱えています。

初期投資を含め、宿泊料の設定など、投資計画のシミュレーションは慎重に行って、リスクを考慮に入れた資金計画を策定しておくとよいでしょう。

すでに空き家や土地などの不動産を所有しており、民泊による活用方法を検討しているのであれば、他の活用方法も併せて検討し、初期費用や収支シミュレーションを比較しておくことが大切です。

前述した通り民泊経営はインバウンド需要の影響を受けやすく、月によって売上の変動が大きい事業です。また、周辺に観光客が訪れるような観光地がない場合、ニーズが獲得できずに想定した利益を得られない可能性があります。

じっくりと調査したり比較したりする時間がなく、不動産の活用方法に迷われた場合は、NTTデータグループが提供する「HOME4U(土地活用)」の利用を検討してみましょう。

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まとめ

田舎の家で民泊を始めるには、住宅宿泊事業法の民泊のほかに、農村休暇法の農家民宿を利用するという方法もあります。これらの手続きは少々手間となりますが、通常の旅館業法と比べて規制緩和がなされ、田舎でも開業しやすいメリットがあります。

本記事を参考に、ご自身に合った民泊投資を検討していただければと思います。