空き家を有効に活用したいが、売るべきか貸すべきか、資産運用としてどちらが正解なのか分からない、という方は多いのではないでしょうか。
本記事では、空き家を売る場合と貸す場合の、メリットとデメリットを整理し、それらを下に簡単なキャッシュの数値シミュレーションを加え、何をポイントにしてどのように判断すればよいのか、を考えていきます。
1.空き家を売る場合のメリットとデメリット
まず、空き家を売る場合に、資産運用の観点から考えられる、一般的なメリットとデメリットをご紹介します。
不動産は物件の立地や状態によって資産価値や運用価値に大きな差があるという特徴があります。一般的なメリットやデメリットが、ご自身の所有している空き家に当てはまるのか、あるいは、当てはまらないのか、それらを検討して売るか、貸すかの判断をする際のポイントについては、後で改めて解説します。
1-1.空き家を売る場合のメリット
空き家を売却するメリットを見て行きましょう。ここでは下記3つの主なメリットについて解説します。
- 売却による現金収入
- 住宅ローンの返済
- 維持管理の手間が省ける
これらのメリットをそれぞれ見て行きましょう。
売却による現金収入
不動産を売る大きなメリットの一つに、現時点での現金収入、という点が挙げられます。現時点で現金化することで、不動産に投資された資金を確保することが可能です。
また日本は人口減少社会であるため、不動産全体の賃貸需要は将来的には減少傾向にあると見られます。不動産の資産価値は立地や現況によって差があるため一概にはいえないものの、現時点で不動産を売って現金化することで、将来的な不動産価格下落のリスクを避けることになります。
住宅ローンの返済
空き家であっても、まだ住宅ローンが残っているケースもあるでしょう。空き家を売ることで、その住宅ローンの残債を返済することができます。月々の住宅ローン返済によって家計が苦しい場合は、資金繰りを一気に好転させることが可能です。
維持管理の手間が省ける
空き家を売却することは、貸す場合と比べて維持管理する手間が省けることもメリットといえます。固定資産税や清掃費用などの維持管理のコストは、家賃収入がなかった場合にも発生するコストであり、売ることによってこれらの手間やコストがなくなることになります。
1-2.空き家を売る場合のデメリット
次に、空き家を売却する際のデメリットについても見て行きましょう。ここでは売却による主なデメリットとして、下記の3つを取り上げます。
- 現金の価値が下落する可能性がある
- 現金で保有すると資産運用の効率が悪くなる
- 思い入れのある家を手放すことになる
こちらもそれぞれ見て行きましょう。
現金の価値が下落する可能性がある
売る場合のデメリットとして、将来的に現金の価値が下落する可能性があることが挙げられます。インフレになると、物価が上がる一方で現金の価値は下がり、資産を現金で保有していること自体がリスクになります。
現金で保有すると資産運用の効率が悪くなる
インフレにならなかったとしても、資産を現金で保有していると資産運用の観点からはデメリットが大きいといえます。
現金で保有して定期預金として銀行に預入れた場合、2020年7月現在の大手都市銀行の定期預金金利は0.002%です。
空き家を賃貸物件として貸す場合の表面利回り(運用資金に対する家賃収入の年利)が、6%~12%程度であることと比較すると、資産運用によって得られる収益とは大きな開きがあることになります。
思い入れのある家を手放すことになる
資産運用の観点以外にも、空き家を売却することによって思い入れの深い家を手放してしまうことによる心理的なデメリットがあります。思い入れのある実家をできる限り残したいと考えている人にとっては他に多少のメリットがあっても、受け入れがたいデメリットととなり得ます。
2.空き家を貸す場合のメリットとデメリット
空き家を売る場合、現金を保有することが資産運用の観点でみるといくつかのデメリットがあることを確認しました。それでは、空き家を貸す場合には、売る場合と比べてどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?それぞれ整理してみましょう。
2-1.空き家を貸す場合のメリット
空き家を賃貸物件として貸し出した場合メリットとして以下の点が挙げられます。
- 家賃収入を得ることが出来る
- 将来の居住用として家を残せる
それぞれ以下で詳細を確認していきましょう。
家賃収入を得ることが出来る
貸す場合の大きなメリットとして、不動産に投資された運用資金から家賃収入を得られることが挙げられます。前述したように家賃収入は表面利回りで6%~12%程度と、運用収益として非常に高利回りであると言えます。
将来の居住用として家を残せる
空き家の入居者が退去した場合には、自己居住用とすることも可能です。将来的に居住用として活用する可能性があるのであれば、大きなメリットとなります。
しかし、賃貸用物件としていったん貸し出すと家賃の滞納などの正当事由がない限り入居者を退去させるのは難しい点には注意が必要です。
一定期間のみ貸し出してその後また住みたい場合には、定期借家契約という契約期間を限定する賃貸契約をすることで、契約後満了後にスムーズに入居者を退去させることができます。
2-2.空き家を貸す場合のデメリット
次に空き家を賃貸物件として貸す場合のデメリットを見て行きましょう。デメリットとして、次のような点が挙げられます。
- 初期設備投資が必要である
- 賃貸事業の継続に費用・手間がかかる
- 空室リスクがある
- 入居者とのトラブルリスクがある
- 資産価値下落リスクがある
以下で、それぞれについて内容を説明します。
初期設備投資が必要である
空き家を賃貸物件として転用する場合には、初期に設備投資が必要になります。
空き家の現状がどのような状態かによって設備投資のレベルに差は出るものの、初期の設備投資として、生活に必要な設備に不具合があれば修理し、汚損があるような設備があれば新品に交換して、入居者が決まる程度に清潔感のある内装にリフォームする必要があります。
クロスをすべて交換すると標準的な一戸建てではおよそ50万程度、床材まで張り替えると併せて100万程度は見積もる必要があります。水回りの設備交換は特に高く、キッチンとユニットバス、トイレを総交換するとなると、さらに100万~150万程度かかるとみておく必要があるでしょう。
賃貸事業の継続に費用・手間がかかる
空き家を貸すというのは、不動産賃貸業という事業になります。事業を継続するために、最低限の物件の維持管理、修繕、税務申告などの費用・手間がかかります。
特に、不動産の賃貸業を営んでいるオーナーは、入居者が生活できるように修繕を行う義務があるため、老朽化による雨漏りや災害による建物の破損などで思わぬ大きな修繕が必要となる可能性があるのは大きなリスクといえます。
空室リスクがある
空室が生じる可能性があるのも見過ごせないリスクです。空室になると、家賃収入を得られず、初期の設備投資を回収できない可能性も出てきます。住宅ローンの返済があり月々のキャッシュ・フローが厳しい場合は、資金繰りが悪化することになります。
入居者とのトラブルリスクがある
入居者とのトラブルが生じる可能性があることも貸した場合のデメリットといえます。入居者によっては、家賃の滞納や、騒音等による隣人とのトラブル、退去時の敷金精算をめぐるトラブルなどが生じる可能性があります。
また、自主管理の場合にはこれらのトラブル対応をオーナーがすべて行うことになり、本業の忙しい方にとっては相当な負担になりえます。
資産価値下落リスクがある
貸す場合は不動産を手放さないため、その不動産の資産価値が下落してしまうというリスクがあります。
不動産の資産価値は、立地や現況によって差があるため、一概にはいえませんが、日本では人口減少に伴い全国的に不動産の資産価値が下落傾向に向かっていく可能性があるため、注意したいデメリットと言えるでしょう。
3.空き家の売却・賃貸、シミュレーションの比較
今までの検討で、資産運用の観点から、空き家を売る場合、貸す場合、それぞれにメリット、デメリットがあることが分かりました。
空き家を売る場合には、現金化してしまうことで運用益を得られる可能性を大きく棄損してしまうことがデメリットといえ、貸す場合は、高利回りの運用益を得られる可能性がある一方で、賃貸事業上の様々なリスクが生じるデメリットがあります。
そこでより具体的な比較が出来るよう、一戸建て(築20年3LDK、現在の市場価格3,000万、賃料15万・利回り6%)のモデルケースを想定して、賃貸事業上の様々なリスクも簡易的な数値に置き換えたうえで、売る場合と貸す場合に手元に残るキャッシュのシミュレーションを見てましょう。
空き家を売る場合のシュミレーション
売却収入 | +30,000,000円 |
---|---|
定期預金利息収入 | +6,000円 |
仲介手数料 | △960,000円 |
登記費用等諸経費 | △20,000円 |
手元キャッシュ残 | 29,026,000円 |
空き家を貸す場合のシュミレーション
次に、空き家を10年間15万円で貸して、10年後25,000,000円で売った場合の手元キャッシュ残高のシミュレーションを行います。維持管理費は家賃の10%、空室リスク・修繕リスクとして家賃の20%を控除します。
家賃収入 | +18,000,000円 |
---|---|
売却収入 | +25,000,000円 |
初期投資費 | △2,000,000円 |
維持管理費 | △1,800,000円 |
空室リスク・修繕リスク | △3,600,000円 |
仲介手数料 | △810,000円 |
登記費用等諸経費 | △20,000円 |
手元キャッシュ残 | 34,770,000円 |
手元キャッシュ残は、10年後に売却したとした数値です。10年で不動産価格が500万下落したとすると、貸す場合の方が売る場合よりトータルで約570万円得をすることになります。
4.空き家を売るか貸すか、見分けるポイントは
以上の整理とシミュレーションを踏まえた上で、空き家を売るか貸すか、見極めるポイントを考えてみたいと思います。
見極めるポイントは大きく分けて2つの視点があると言えます。それは、人生設計の面からの視点と、不動産価値の面からの視点です。それぞれについて具体的に説明します。
4-1.人生設計の視点
空き家を売るか貸すか判断するポイントとして、人生設計の視点から考えてみましょう。
資産運用は運用自体だけが目的ではなく、人生設計をする上で必要な資金を確保し、人生を豊かに過ごすための副次的な役割であると考えることが出来ます。そのような視点から考えると、いまキャッシュが必要なのか、10年後にキャッシュが必要か、という点から空き家の活用方法について判断することが出来ます。
空き家を賃貸物件として貸した場合は、初期の設備投資資金も必要になるうえ、それを家賃収入で回収するために数年の期間を必要とします。現段階で資金繰りが悪くキャッシュが必要なイベントがあるのであれば、それを優先して空き家を売却する判断をしても良いでしょう。
4-2.不動産価値の視点
第2の判断ポイントとして、不動産価値の視点から判断してみましょう。所有している空き家がどのような立地で、現在どのような管理状態かを調査したうえで、その不動産価値から、売るか貸すかどちらが有利なのかを考えて行きます。
不動産の価値は、立地条件が大きな部分を占めます。好立地にあって、将来的に賃貸・売買ともに需要が減退しないと見込めるような物件であれば、貸す選択をすることで金銭的なメリットがある可能性が高いでしょう。
また、好立地にあったとしても築年数が相当経過しており管理状態も悪い場合は、貸せる状態にするまでの初期投資額が大きな金額になります。このような場合には売却を視野に入れつつ、初期投資が回収できるのか慎重に検討する必要があると言えるでしょう。
このように、どちらの場合でもまずは空き家を現時点で売却した場合の価格を知り、どちらのメリットが大きいのか比較しながら検討することが大切です。
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主な不動産一括査定サービス
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
リガイド(RE-Guide) | 株式会社ウェイブダッシュ | 2006年にサービスを開始。2020年で15年目を迎える。独自の審査で厳選した700社の優良不動産会社が掲載。収益物件情報を掲載する姉妹サイトを持ち、他サイトと比較して投資用不動産の売却に強みを持つ。 |
HOME4U | 株式会社NTTデータ スマートソーシング | 全国1300社の不動産会社を厳選。HOME4Uでは査定依頼をする際に、大手企業と地域密着型企業の両方への依頼を推進。 |
イエウール | 株式会社Speee | 全国1,600社が参加。「地方・地域密着」企業を多数掲載し、地域情報を交えたより詳細な情報から査定を追求。 |
まとめ
今回は、空き家を売るか貸すかのメリットとデメリットやそれぞれのシミュレーション、判断する際のポイントについて解説しました。
実際の空き家の売却・運用の場面では、空き家の現状や所有している方の考え方によってメリットとなる部分は大きく変わります。まずは人生設計の視点から当座のキャッシュの必要性を考え、次に個別の不動産価値の視点からの有利性を検討するとよいでしょう。
本記事を参考を豊かな人生を送るために活用していただければと思います。
※この記事は金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」より転載された記事です。
【元記事】https://hedge.guide/feature/unoccupied-house-selling-and-renting-points-merits-and-demerits.html
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