民泊ダッシュボード開発を手がけるメトロエンジン株式会社と民泊・ホテル運用代行のオックスコンサルティング株式会社は5月27日、今年第一回目となる「バケーションレンタルEXPO」を開催した。当日は民泊・バケーションレンタル事業に関わる54社が出展、3,000名を超える人々が来場し、民泊に関する国内イベントとしては過去最大規模の盛り上がりを見せた。
企業ブースエリアでは民泊仲介サイトや民泊運用代行会社、清掃代行会社、不動産会社、スマートロック、民泊IoT、民泊支援アプリなど民泊に関わる様々な業種の事業者が出展し、どのブースも来場者で賑わいを見せていた。
ブースエリアで特に顕著だったのは、海外企業勢の出展の多さだ。エクスペディアグループのバケーションレンタルプラットフォームHomeAwayやシンガポールに本拠を置くAgodaをはじめ、中国系からは民泊仲介サイトの途家、自在客、住百家、小猪、AsiaYoが勢ぞろいし、米国カリフォルニアからはスマートロックを手がけるCandy Houseが参加するなど、今後の急成長が見込まれる日本の民泊市場に対する海外企業らからの強い期待を感じさせる顔ぶれだった。
日本市場について、中国系民泊サイト大手の住百家で海外事業部マネジャーを務めるChoco Zhang氏は「日本には現在2万件ほど物件が登録されており、東京にはマンションが、京都では一軒家などが多く登録されている。住百家上で一番予約が多いのは日本なので、日本市場を重点的に開拓していく」と話す。
また、昨年にはAirbnbによる買収をめぐるニュースでも話題を呼んでいた中国系民泊サイトの小猪にて副社長を務めるMichael Sun氏は「今日は日本の民泊ホストや民泊運用代行会社、ホールセラーらとより多くのパートナーシップや協力関係を構築するためにやってきた。日本は中国で最も人気がある観光地。我々は日本市場に進出してまだ4ヶ月で物件数も500件だが、今後は5,000件を目指す」と語った。
従来は民泊といえばAirbnbというイメージが先行していたが、状況は徐々に変わりつつある。先月にはせとうちDMOとの提携を発表したHomeAwayも日本における物件登録数を順調に増やしており、他の中国系サイトの勢いも増している。新法制定後は既存のOTAや日系大手旅行予約サイトも市場に参入してくる可能性があり、民泊ホストにとってはゲスト集客プラットフォームの分散も進みそうだ。
また、当日はブース出展と同時に3会場で合計25のセミナーが開催され、法律から民泊運用ノウハウに関する話まで幅広いテーマのトピックについて話し合われた。エクスポ開催の前日となる26日にシェアリングエコノミーを活用した新しい働き方の創造に向けて業務提携を発表したAirbnb Japanとパソナは、同テーマに関するセミナーを共同で開催した。
セミナーではAirbnb Japanにてホームシェアリング事業統括本部統括本部長を務める長田英知氏、パソナにて地方創生特命アドバイザーを務める勝瀬博則氏、そして法律事務所オーセンスの森田雅也氏が登壇し、ホームシェアの仕組みを活用した雇用創造や地方創生などについて話し合った。今後、パソナとAirbnbは協働してホスト人材の育成を進め、特に地方に根ざしたホームシェアにより地域課題の解決に貢献していくという。また、地方のお祭りや国際会議などのイベントを通じたシェアリング事業を展開し、各地でシェアリングエコノミーを活用したコミュニティづくりを進めていくほか、オリンピックなどの宿泊施設不足解消においても連携していくとのことだ。
セミナーは同時間帯の並行開催にも関わらずほとんどが満席状態となり、いずれのセミナーも人気を博していたが、その中でも立ち見が出るほど人だかりが多くできていたのが、特定行政書士の戸川大冊氏による「住宅宿泊事業法を正しく理解し、合法的に運営する」セミナーと、行政書士の石井くるみ氏による「用途変更ってなに?~民泊許可のハードルを分かりやすく解説~」だ。来場者は民泊をめぐる法制度の最新情報について特に強い関心を持っている様子だった。
これまでは旅館業法や特区民泊の許認可を持たない違法民泊が主流だった日本の民泊市場も、民泊新法の制定、施行後は状況が大きく変わることが予想される。この来たる変化を前に、民泊ホストの関心も「いかに民泊運用で利益を出すか」という視点から「いかに合法的な形で運用をしていくか」という点へと移ってきていることの証だろう。
日本橋くるみ行政書士事務所の石井くるみ氏によれば、最近は民泊に関する相談の質も徐々に変化しており、「保有している家やマンションで許認可をとりたいという話は以前から多いが、最近では新築で建てたいという方のプラン設計や、新法を見据えて民泊に関するコンサルティングをしてほしいという依頼が増えている」という。
日本の民泊市場が今後も健全な形で長期的に発展していくためには、民泊をめぐる法整備はもちろんだが、民泊ホストや事業者らによる法令遵守や意識向上も欠かせない。その意味でも今回のエクスポは改めて関係者一同が今後の方向性を確認するよいきっかけとなったようだ。
主催者のメトロエンジン株式会社にて代表を務める田中良介氏は「今回は初めてのバケーションレンタルEXPO開催となったが、欧米系、中国系を始めとする日本国内でバケーションレンタルを提供するプラットフォームのほぼ全社、並びに合計54社に及ぶ関連事業者が参加する国内最大のイベントとなった。当初は色々と不安もあったが、大きなトラブルもなくビジター、出展者からも多くの反響を頂き、大成功だったと思う。民泊の運営をされているホストの方はもちろん、多くの法人様、大企業関係者様などに参加いただいた。また、今回のイベントを踏まえ、参加ができなかった事業者様からも次回の参加希望を既にたくさん頂いており、さらにパワーアップしたバケーションレンタルEXPOを開催したい」と話す。
また、同主催者のオックスコンサルティング代表を務める原康雄氏は「弊社としては今回が初めてのイベント開催だったが、大きな手応えを感じている。今回は不動産業界を中心に企業の方に多く来ていただいたが、民泊を事業化したい企業の熱を肌で感じることができたのではないか。次回開催時のキーワードは『不動産』と『金融』。法整備に合わせる形で民泊運用のための融資制度なども整っていけば、民泊業界にさらに多くのお金が流れ込み、景色が大きく変わる。次回の開催がとても楽しみだ」と語った。
民泊やバケーションレンタルに関わる事業者が国内外から集結した今回のイベント。来場者はもちろんだが、出展事業者にとっても他社とのネットワークができる貴重な機会となったに違いない。次回のバケーションレンタルEXPOは2018年3月に開催予定とのこと。次回の開催までに各社がどのように成長を遂げ、新たな製品・サービスをお披露目するのか。新法をめぐる動向と合わせて事業者の動きについても注目したい。
(Livhubでは追ってバケーションレンタルEXPO当日の出展企業様のインタビュー記事や動画も配信予定です。当日ご来場いただけなかった皆様もぜひ楽しみにお待ち下さい。)
【参照サイト】バケーションレンタルEXPO
(Livhub ニュース編集部)
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