【取材レポート】シェアリングエコノミー協会meetupが開催!Airbnb、HomeAwayらが議論

Livhub編集部では、7月21日の夜に開催された一般社団法人シェアリングエコノミー協会が主宰するミートアップイベント「民泊最新動向!今後の普及に向けて」に参加してきました!当日はAirbnb、HomeAway、スペースマーケット、パソナら民泊事業に関わる企業の担当者に加え、民泊やシェアリングエコノミー政策に関わる官公庁からも参加者が集まり、民泊市場の最新動向と今後の行方について話し合われました。当日の様子をご紹介したいと思います。

基調講演「インバウンド増加 × 宿泊施設不足 × 空き家活用 → 民泊」

前観光庁観光産業課 観光産業課長・西海重和氏

基調講演では、前観光庁観光産業課 観光産業課長の西海重和氏から「民泊と宿泊対策の現状について」というテーマでお話がありました。

講演の冒頭では、政府による戦略的なビザ緩和や免税制度の拡充、航空ネットワークの拡大など大胆な改革が断行した結果、訪日外国人旅行者数は過去3年間で2倍の約2,000万人へ、訪日外国人旅行者の消費額は3倍増となる約3.5兆円へと拡大したと説明がありました。この成果を受けて、現在政府は新たな目標へ挑戦しており、訪日外国人旅行者数は2020年に4,000万人、2030年には6,000万人を目指すとのことです。

一方で、訪日外国人に増加に伴い宿泊施設の稼働率は逼迫した状況が続いており、例として繁忙期である昨年8月のホテル・旅館の稼働率データをもとに現状の共有がありました。西海氏が提示したデータによると、昨年8月にはリゾートホテルでは10都道府県、ビジネスホテルとシティホテルでは実に19もの都道府県が稼働率80%を超えており、リゾートホテルおよびシティホテルでは稼働率が90%を超えた都道府県も3つあったとのことです。また、これまで稼働率が高いのは主に大阪、京都、東京など都市圏の人気観光地でしたが、最近では地方部へのクルーズ船運航も増えており、これからは地方にいく訪日外国人がどんどん増えていくとの話がありました。

続いて、宿泊施設不足という課題の解決策として、全国で増え続けている空き家の活用についても説明がありました。日本全国の空き家総数はこの20年で1.8倍となる820万戸へと増加しており、空き家問題は年々深刻化しているとのこと。しかし、空き家のなかでも最寄駅から1km以内にある賃貸用住宅の空き家は137万戸、一戸建てを中心とするその他の住宅の空き家は48万戸もあり、これらの空き家は民泊施設として活用できる可能性を大きく秘めているとの話がありました。

そして最後に、これらの現状を踏まえたうえで政府が推進している民泊の法整備状況、特区民泊や民泊新法といった各制度についての詳細な説明がありました。同氏のお話からは、政府の目標や様々なマクロデータを考慮すれば、改めて日本全体として民泊を推進していく社会的意義が高いことを強く感じさせられました。

パネルディスカッション「民泊新法は、ぶっちゃけ何点?」

左からスペースマーケット・石原氏、HomeAway・木村氏、Airbnb・山本氏、前観光庁・西海氏、ベンチャーリパブリック・柴田氏

基調講演に続いて行われたパネルディスカッションでは、引き続きの登壇となる前観光庁観光産業課長の西海氏に加え、Airbnb Japanで公共政策担当部長を務める山本美香氏、HomeAway日本支社長を務める木村奈津子氏、スペースマーケットの社長室付き弁護士の石原遥平氏、そしてベンチャーリパブリックの代表取締役を務める柴田啓氏という豪華なメンバーが加わり、柴田氏がモデレーターとなって約25分にわたり民泊に関する議論が繰り広げられました。非常に豪華なパネリスト陣であるだけに参加者の誰もがもっと話を聞きたいと感じていたと思いますが、ここではそのなかでも特に印象に残ったお話をご紹介したいと思います。

前観光庁・西海重和氏

柴田氏からの最初の質問である「民泊の現状」について、前観光庁の西海氏は多様な宿泊施設として民泊の形態を「古民家・町家(サテライト民泊含む)」「新法民泊(住宅・イベント民泊含む)」「農家民宿・農家民泊」「国家戦略特区(一般賃貸住宅)」という4つに整理されていました。

編集部が注目したのは、「古民家・町家(サテライト民泊含む)」です。このスタイルは最近の京町家における民泊施設に代表されるように、主に簡易宿所営業による運営が中心となっていますが、古民家や町家を活用した民泊については「サテライト民泊」の新形態として異なる民泊事業者が帳場を共有するスタイルでも対応できるよう旅館業法の改正も検討されているため、今後の法規制動向によっては新たな事業チャンスが生まれそうです。

また、一言で「民泊」といっても既にこれだけ多様な民泊の形があり、これから民泊に参入する事業者はどのスタイルで宿泊施設を提供していくのか、もしくは複数のスタイルを組み合わせるのかなど、自社の強みや資産に合った形態を選択していく必要性も感じました。こうした多様な宿泊形態が生まれることはゲストにとっても素晴らしいことですので、今後それぞれの民泊が法制度も含めてどのように進化していくのかにも注目したいところです。

HomeAway・木村奈津子氏

続いてのパネルディスカッションのトピックは、ずばり「民泊新法は100点満点で採点すると何点か?」というもの。この問いに対し、前観光庁の西海氏は、施行後になってみないと分からないということで50点と謙虚な回答。一方Airbnbの山本氏は、今後の政省令とガイドライン次第だと前置きはしつつも、「骨子の内容としてはステークホルダーのバランスが良く考えられているという点で100点」と高評価。HomeAwayの木村氏も、詳細のガイドライン次第とはしつつも同様に80点と高評価。そしてスペースマーケットの石原氏も100点と回答しました。各プラットフォーマ―の見方としては、民泊新法の成立に対して全体的にかなり前向きな評価をしていることが分かりました。

Airbnb・山本美香氏

また、「民泊をめぐる法規制は国によって整備状況が違うが、日本は世界のスタンダードから見てどうか?」という質問に対しては、Airbnbの山本氏が「各国ともに背景が異なるため一概に比べるのは難しいものの、管理者(住宅宿泊管理事業者)という仕組みは日本独自のユニークな仕組みで、どう進化していくのかが楽しみ。新しいという意味では最先端だ」と前向きなコメントをしていました。

そして、今後の民泊のトレンドについて訊かれると、HomeAwayの木村氏は「今はC to Cが多いが、今後は大手企業の参入が見込まれる。C to B to Cに変わっていくのでは」と回答、Airbnbの山本氏は「先日もBeyond Citiesというレポートを発表したが、日本でもゲストが都市部から外に行き始めている。これからは地方だ」と語り、民泊マーケットを牽引する二大仲介事業者がそれぞれ今後の市場をどのように見ているのか、その角度の違いが分かりました。

スペースマーケット・石原遥平氏

最後に、「民泊にはどのようなテクノロジーがぴったりと来るか」という質問については、Airbnb山本氏は「(Airbnbが)旅の包括的プラットフォームになっていくなかで、マッチング精度が鍵を握るようになるため、機械学習に注目している」と回答、一方のHomeAway木村氏は「ホストや代行会社の方と話しているとセキュリティ面での懸念が強い。セキュリティも含めたオペレーションのオートメーションが重要」だと説明しました。また、スペースマーケット石原氏は自社の経験からも「VRによる内見などは可能性がある」と語り、ベンチャーリパブリックの柴田氏も深く同意されていました。

25分という非常に短い時間でしたが、とても濃い話をたくさん聞くことができました。ここで全てをご紹介しきれないのが残念ですが、民泊市場がこれからますます面白くなっていくことを強く感じさせるパネルディスカッションでした。

パソナ「人に会いに行く旅。シェアエコ時代の新しい働き方を創造する」

パソナ・加藤遼氏

パネルディスカッション後には、シェアリングエコノミー協会の特別会員でもある株式会社パソナのソーシャルイノベーション部で副部長を務める加藤遼氏からもショートピッチがありました。加藤氏によると、パソナでは「人に会いに行く旅」というコンセプトで、シェアリングエコノミー時代における新しい働き方の創造に取り組んでいるとのこと。

人材ビジネスの大手企業としては唯一民泊の市場に積極的に関わり、Airbnbとの提携による「地域おもてなしホスト」の育成や、徳島市における阿波踊り期間中のイベント民泊、宮城インバウンドDMOとの提携による宮城県南地域における民泊推進ワーキンググループの結成、農水省との提携による農泊ホスト・農泊コーディネーター育成など、全国各地でユニークな取り組みを展開している同社が、どういった経緯や理念に基づいて事業を進めているのかお話がありました。パソナでは今後、2020年までに「地域おもてなしホスト」を1万人育成するとの目標を掲げているとのことです。

民泊市場が健全な形で発展していくためにはホストをはじめとする事業の担い手となる人材の育成が不可欠です。不動産やホテルといった事業者らが民泊市場における「ハードのインフラ」づくりの担い手だとすると、パソナのような人材企業は「ソフトのインフラ」づくりの担い手だと感じました。民泊の面白いところは、建物や設備といったハードだけではなく、ホストによるおもてなしや体験といったソフトの価値を高めることも重要だという点です。日本の民泊市場が健全な形で発展していくためにはこれら2つの要素がいずれも必要であり、その意味でパソナの動きには今後も注目したいところです。

まとめ「民泊はすでに多様であり、もっと多様になっていく」

パネルディスカッションの終了後は参加者同士の交流会があり、そこでも色々なお話を聞くことができました。今回のミートアップに参加して感じたのは、「民泊」はすでに「民泊」という一言では言い表せないほど多様な形態へと進化しており、異なるプレイヤーもそれぞれの視点から多様な見方をしているという点です。

民泊を不動産投資の一形態として見る人もいれば、インバウンドビジネスの文脈で語る人もいますし、ホテルや旅館とは違う新しい「旅体験の形」として期待する人もいる。また、民泊を観光政策の観点から見ることも、空き家対策の観点から見ることも、雇用創造の観点から見ることもできる。ロマン重視の人もいれば、ソロバン重視の人もいる。

こうした多様なプレイヤーが今回のようなミートアップを通じてお互いに交流しあい、それぞれの考え方を吸収しながら、ときにコラボレーションして、ときに競争する。そうした多様な関係性のなかで新たな価値が生み出され、結果として日本が世界に誇れる「日本ならではの民泊」をみんなで作っていくことができれば素敵だなと感じました。

【参照サイト】一般社団法人シェアリングエコノミー協会

(Livhub 編集部)

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Livhub 編集部

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