米中の貿易摩擦の影響や株価の急変など、2019年の経済は年明けから不透明。だが旅行者の足が止まることはなさそうだ。株式会社JTBが2018年12月20日に発表した2019年の旅行動向見通しでは、訪日外国人旅行者数は過去最高の3,550万人(前年比12.3%増)、日本人も国内、海外旅行ともに前年より増加すると展望している。
調査は1泊以上の日本人の旅行(ビジネス・帰省を含む)と訪日外国人旅行について各種経済動向や消費者行動調査、運輸・観光関連データ、JTBグループが実施したアンケート調査などから推計。1981年に開始し今回が40回目となる。
まず、市場規模で総旅行人数は3憶1,000万人(同1.5%増)、訪日外国人を除く日本居住者による国内旅行の人数は2億9,090万人(前年比1.5%増)。平均消費額は3万6,600円(同2.0%増)で、国内旅行消費額は10兆6500億円(同3.6%増)に上ると推計した。
足元の景況感が良く祝日数も増加するため、人数増を予測する。平均消費額のアップは10月から予定される消費増税の影響と旅行支出意欲の増加などを考慮した。海外旅行人数は1,910万人(同1.1%増)で、こちらも過去最高となる予測だ。
2019年は消費者の暮らしに関わる大きな出来事が控えている。1つは5月の新天皇陛下の即位と改元、2つ目は消費増税。5月のゴールデンウィークは即位関連行事の関係で4月27日から10連休となる。改元の祝賀ムードがレジャーや買い物の意欲を喚起するという見立てだ。消費増税は税率が8%から10%となり、家計への影響が懸念される。しかし、食料品(外食と酒を除く)などは8%に据え置く軽減税率が設定されること、プレミアム商品券などさまざまな負担軽減策が検討されていることから、マイナス影響の緩和を期待する。
また、2014年4月に消費税が現行の8%に引き上げられた際は日本人の宿泊旅行は、その2か月後から影響が出始め、冬期まで前年割れが続いた。今回は10月からということもあり、「年内にはあまり大きく影響しない」と、予測を先送りにした。
今月7日から国際観光旅客税(出国税)の徴収が開始され、原則として航空会社や船舶会社がチケット代金に上乗せする方法で出国1回につき1,000円が徴収される。しかし調査では「影響は少ない」とする。
旅行に関してはアンケート調査の「今後一年間の旅行支出について」の項目で、「増やしたい(15.9%)」と「現状維持(58.6%)」が共に同1.9ポイント増。対して「減らしたい(25.4%)」は、前年比4.0ポイント減で、旅行支出への意欲は高め。ほか、旅行人数の増加要因として、「ゴールデン・スポーツイヤー」の第1弾となる大型スポーツイベント「ラグビーワールドカップ2019日本大会」開催がある。加えて国際線の拡充、デジタル技術を活用した予約サービスや旅行体験の拡大、新しい劇場やテーマパークの開業、宿泊施設の多様化と民泊の利用などが挙げられている。
調査項目には含まれていないが、旅行のリスクには災害がある。震災や豪雨が相次いだ18年は訪日外国人旅行者数の増加が一時的に鈍った。特定の場所に人が集中するイベントなどでは警備の強化も課題だ。多くの人が安全・安心に旅行を楽しめる環境を整備できるかが、2019年が見通しどおりの「ゴールデン・トラベルイヤー」になるかのカギといえる。
(Livhubニュース編集部)
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