アジア9拠点でSEO、PPC(リスティング広告)、ソーシャルメディア、リサーチなどのグローバルマーケティング事業やアセット事業を展開するアウンコンサルティング株式会社(以下、アウンコンサルティング)は2月6日、2017年におけるインバウンド市場動向に同社の予測を加えた「2017年のインバウンド市場動向総括と今後の展望」を公表した。
政府は2020年までに訪日外国人旅行客(訪日客)4,000万人、消費金額8兆円の目標を掲げている。2016年の訪日客数は、前年比21.8%増の約2,403万人(+430万人)。これに対し、2017年1月から12月までの訪日客は、前年比19.3%増の約2,869万人(+465万人)(推計値)に達し6年連続の増加となった。アウンコンサルティングの算出によると、政府の目標を達成するためには、最低でも毎年377万人ずつの訪日客の増加が必要になるが、2017年のインバウンド市場動向と照らし合わせると、毎年377万人をクリアし、消費金額8兆円を達成することは容易ではない。
2017年の訪日客数は、韓国からの訪日客急増が顕著だった。人数は中国の735万人(前年比 98万人増、15.4%増)に劣る714万人であったが、初めて700万人を超え、前年比205万人増の40.3%増という高水準であった。
伸び率が高い国・地域は、韓国のほか、ロシア7.7万人(前年比 2.2万人増、40.8%増)、ベトナム30万人(前年比 7.5万人増、32.1%増)など。特にロシアでは企画・販売されている訪日旅行ツアーが少ないため、ツアーが増えればさらなる訪日客の増加も期待できる。一方、個人消費額の高いことからプロモーションに力を注いできた欧米圏では、訪日客数は増加しているものの、増加率については鈍化傾向にある。
消費金額については、2015年に流行語大賞となった「爆買い」から2年が経過し、その傾向が製品などの購入を目的とする「モノ消費」からレジャーやサービスなどの体験や思い出を目的とする「コト消費」へと変化している。
中国・香港などアジア圏の消費金額は減少している一方で2017年の全国百貨店売上高が3年ぶりに前年を上回った。化粧品などの市場では引き続き売上を伸ばしており、特に新興国のタイやマレーシア、ベトナムからの訪日客の中には一定の「モノ消費」が健在しているものとみられる。しかし、アウンコンサルティングは「モノ消費」がいまだ活発な地域も、越境ECが普及し、日本製品が容易に手に入るような環境が整えば、いずれ「コト消費」に移行していくと推測している。
このような市場動向から、2020年までに訪日外国人旅行客数4,000万人、消費金額8兆円という目標に対し、特に消費金額にまつわる課題が大きいことが分かった。仮に訪日外国人旅行客が順調に増加したとしても目標額に届かない事態も想定される。目標達成に向け、アウンコンサルティングは以下の取り組みを提案している。
まず外国人訪日者数増加に向けた取組みについて、「インフラ(受入)整備の拡充化継続」「更なるビザ緩和、免除拡大」「リピーター獲得に向けた取組(インフラ整備、地方圏への誘客)」「民泊関連の整備(宿泊施設供給数の増加)」「アジア圏以外の国・地域からの訪日旅行客の増加へ向けた取組(プロモーション強化)」を挙げている。
同時に行うべき「平均消費金額増加にむけた取組み」については「免税制度の改正(2017年10月改正の影響も今後発生)」「ナイトタイムエコノミーへの取組み」「滞在日数の増加、地方への誘客(+1日の取組み)」を挙げた。
特に2017年6月から施行される民泊新法は、今後のインバウンドマーケットの成長に大きく影響するだろう。多言語対応が必須となる民泊等の宿泊施設はリピーターを地方へ分散させる要としても重要だ。
アウンコンサルティングは、リピーターの地方分散には、民泊などで魅力的な宿泊先を増加させることに加え、地方観光地の魅力をメディアやSNSを利用してアプローチしていくことも有効な手段であるとした。実際に栃木県の「あしかがフラワーパーク」は、2014年にCNNに「大藤」が取り上げられたことをきっかけに中国、台湾のほか、タイやマレーシア、ベトナムなど東南アジア地域から多くの外国人旅行客が訪れ、2016年の外国人客数が2015年春の倍となる10万人に達した。
また、ロケ地を観光資源に活用して観光客の増加を図るロケツーリズムを利用したプロモーション手法についても提案している。佐賀県では、鹿島市の祐徳稲荷神社(ゆうとくいなりじんじゃ)や伊万里市南部の大川内山(おおかわちやま)がタイの人気映画のロケ地として利用されたことにより知名度も徐々に上がり、28年の1月~12月の1年間で外国人宿泊客が前年比10%増の3.6万人も増加した。日本人の間でもロケ地巡りは人気で、「君の名は」の聖地巡礼がブームとなったことは記憶に新しい。ドラマや映画、アニメなどを利用したプロモーション手法は観光客増加の起爆剤となり得る。
政府が掲げた目標の達成は、インバウンドマーケットの成長と必ずしもイコールとは言えない。しかし、東京オリンピック終了後も見据えてインバウンドマーケットを成長させるには、民泊新法施行などの新しい動きに対応することはもちろん、流行を読み取り、リピーターを呼び込むなど、一層の努力が必要となっていきそうだ。
(Livhubニュース編集部 平井 真理)


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