クラウドファンディング×宿泊業がインバウンドニーズを支える。SAMURAI証券が展開する町家の再生事業

訪日外国人の増加や旅行・宿泊の多様化に伴い、近年は不動産や小売、サービスなど、様々な業界が宿泊事業に参入している。投資銀行事業、Fintech事業、情報サービス事業を手がけるSAMURAI&J PARTNERS(サムライ&ジェイ パートナーズ)株式会社もその一つであり、2018年6月には楽天グループの民泊事業会社である楽天LIFULL STAY株式会社との業務提携に合意した。

これにより、SAMURAI&J PARTNERSの連結子会社であるSAMURAI証券株式会社は、同社が提供するクラウドファンディングサービス「SAMURAI(サムライ)」にて、楽天LIFULL STAYが提供するブランディングおよび運用代行サービス「Rakuten STAY」の宿泊施設開発を目的としたファンドを販売している。

今回はSAMURAI証券の代表取締役社長である澤田氏に加え、同社取締役の久保氏、グループ企業であるSAMURAI ASSET FINANCE(サムライ アセットファイナンス)株式会社取締役の岡田氏にお話を伺った。

クラウドファンディング「SAMURAI」のサービスサイト。現在30~40代を中心に、幅広い世代の投資家が登録している。

クラウドファンディングについて

御社の事業について詳しく教えてください

SAMURAI&J PARTNERSグループとしては現在、投資銀行事業、Fintech事業、情報サービス事業を展開しておりますが、元々は情報サービス事業を主軸とした会社でした。その後、投資銀行事業をしていたAIP証券を子会社化し、2017年11月に現在の「SAMURAI証券」へ称号を変更。本格的に投資銀行事業やクラウドファンディング事業が始まっています。

SAMURAI証券の売上は現時点においては投資銀行事業が大きいですが、会員数や募集額、収益も急速に増えてきているので、来期・再来期にはクラウドファンディング事業を会社の収益の中心としたいと考えています。

今後は投資銀行事業からクラウドファンディング事業を主体にしたいと語る、SAMURAI証券 代表取締役の澤田氏

クラウドファンディング事業をスタートしたきっかけとは?

SAMURAI証券の前身であるAIP証券は元々、第一種金融商品取引業のライセンスを持っていました。その後、第二種金融商品取引業の登録を行い、2015年5月末からクラウドファンディング事業をスタートしました。

野村証券や大和証券といった先達の大手企業は、既に顧客基盤を有しており圧倒的なチカラを持っています。そのため同じようなビジネスモデルでやっても、後発である我々が勝てないのが現状です。

しかしインターネットというツールは、コストを掛けずに不特定多数にアプローチできるほか、後発の我々でも勝てる要素があること、さらに投資銀行事業とクラウドファンディングはシナジーがあると思い、2015年に事業をスタートしました。

よく有名人もクラウドファンディングをされていますが、その違いとは何でしょうか?

大きな見方としては、金銭を返すか返さないかの違いです。金銭を返さないものは「寄付型」や「購入型」というもので、金融の世界とは別の世界。事業者数も非常に多く100社以上もの企業があります。

しかし弊社は「金融商品取引法」という法律で規定された“金融業”として、投資型クラウドファンディング事業を展開しております。投資家から投資を募り、リターンを分配するという性質上、許認可が必要であり、そこで勝負しているのが弊社ですね。

第一種の免許を持つ「証券会社」として同社は、投資型クラウドファンディングを主体に行っている。

御社の強みを教えてください

「証券会社」であるということが強みですね。金融商品取引業の中には「第一種金融商品取引業」と「第二種金融商品取引業」があり、第一種はいわゆる証券会社になります。第一種(証券会社)は様々な厳しい規制がありますが、その分、投資家に対しては信頼性が高いと自負しています。

他社のクラウドファンディングはほぼ第二種ですが、弊社は第一種・第二種共に持っており、「証券会社」という看板のもとで事業を行えるのは大きな強みです。

また、国内でも数少ない電子申込型電子募集取引業の登録を行っているほか、貸金業を営むSAMURAI ASSET FINANCEをはじめ、グループのシナジーを活かしてクラウドファンディング商品を組成していけることも強みです。

どんな投資家の方がいらっしゃいますか?

一般の証券会社と比べ、30~40代の若い世代の方が多いですね。クラウドファンディング事業はインターネットで投資家を募集するため、どちらかというとインターネットリテラシーや情報感度が高めな方が多く、都心部に住んでいる方が多い傾向です。しかしそれ以外の層も取り込まないと、成長に限界があると思っています。

ネット証券などを見ると60代の方も多くいます。まずはセミナーであったり、ネットとリアルな部分を組み合わせたりと、業界の認知度と共に信頼度を上げるための工夫は必要だと思います。これは業界全体として言えることです。

ただこれから大きな流れとしては、インターネットはすでに普及していますし、10年後には40代の方が50代に、50代の方が60代になります。リアルからネットにという流れは変わらないと思うので、金融もネットのほうが伸びてくるはず。そういった意味では追い風が吹いていると感じています。

インターネットリテラシーのある世代が広がれば、会員数も自ずと増えてくると語る、取締役の久保氏

<民泊ファンドについて>

宿泊施設のクラウドファンディングを始めたきっかけとは?

弊社ではかねてよりクラウドファンディング商品組成について新たなテーマ検討しており、その大きなテーマの一つが「訪日外国人を対象とした宿泊施設」でした。訪日外国人は年々増加し、市場規模も拡大していることから、投資ニーズも今後拡大していくのではという目線です。ただ投資家の資金を募ることから、商品組成においては十分な実力やサービス提供できるパートナーが必要不可欠でした。

そんな中、元々SAMURAI&J PARTNERS代表の安藤と、楽天LIFULL STAYの方が知り合いだったことがきっかけでやりとりが始まったのですが、楽天LIFULL STAYは宿泊施設のデザイン監修・運用代行のみならず、送客支援にいたるまで、ワンストップでサービス提供が可能であったことから業務提携に至り、商品組成を行いました。その第一号となるのが、大阪デザイナーズ民泊ファンドです。

楽天LIFULL STAYとの業務提携のもと投資家を募っている「大阪デザイナーズ民泊ファンド

 

楽天LIFULL STAYの町家プロジェクトの進捗を教えてください

現在は設計に取り掛かっていて、その設計の大枠ができるのが来年の始めだと聞いています。完成予定は来年の秋ですが、許認可の申請も含め来年の夏くらいに完成できないか調整しているところです。

物件のデザインに関しては、楽天LIFULL STAYからの提案もあり「Rakuten STAY」ブランドを活用させていただいています。町家の強みはやはり、建物を丸々借りられるところ。今回は大阪の住宅地の中に所在しており、海外の宿泊者は日本の住宅地の中で宿泊できるのが魅力です。

また本商品は、事前にSAMURAI ASSET FINANCEがSPC(特別目的会社)に資金を貸し付け、その資金の一部をクラウドファンディングで集めるというスキームを採用しています。スキーム上の特色でもあるのですが、投資家も我々が一緒にリスク取るような「運命共同体」として運営しているのが特色です。これにより投資家も投資しやすい環境をつくっています。

物件所有をしているSPCに既に融資をしているため、投資家のリスクが軽減できると語る、
SAMURAI ASSET FINANCE取締役の岡田氏

投資家からの反応はいかがですか?

利回りを見て買われる方や、コンセプトを面白いと思って買われる方など様々ですね。中には、デザイナーズファンドができたとブロガーの方が記事を書いてくださったこともありました。そういった意味で注目度が高く、反響がありました。

人口減少により、中心地以外のオフィス・住宅需要は今後減少していくと想定される中で、新たな需要を生み出す不動産の活用方法を考える必要があり、その一つが民泊でした。

訪日外国人の増加により民泊需要が増加していることや、ホテルがあっても民泊に泊まりたいという旅行者も多くいます。また、訪日外国人自体はこれからも増えるだろうと見込んでおり、特に大阪・京都は訪日外国人に根強い人気あるエリアだと考えています。我々の考えとしては、多種多様な不動産のアセットを取り扱っていますが、その一つの方法が民泊です。

また、投資型クラウドファンディングユーザーは、首都圏に集まる傾向があるため、今回のように大阪や首都圏以外のエリアを対象とした商品を組成することで、地元の人達に興味を持ってもらうという狙いもあります。

加えて民泊と言うと比較的若い人の反応が高いだろうと考え、次世代の投資家に興味を持ってもらえるのではないかと。もちろん50~60代の投資家も取り込みたいですが、裾野は広げていきたいので、様々な投資家に興味を持ってもらいたいですね。

商品購入にあたりどんなメリットがありますか

一般的に民泊事業等に投資をしようと思っても、最小単位でも数百万円は掛かってしまいます。しかし弊社の商品は、最低1万円からの購入が可能であり、少額によるカジュアルな投資ができます。「金融商品はまとまったお金がないと投資できない」といった概念を打ち破ることが弊社クラウドファンディング事業のコンセプトの一つと考えています。

最低1万円からという「カジュアル」な投資ができるので、はじめて投資にチャレンジしたい方にもオススメだ。

今後の事業展開と投資家の方に向けてメッセージをお願いします

できる限り広げていきたいというのが現状です。まずは今進めている民泊の形が見えてきた時、次を考えたいなと。またエリアに関しては、やはり京都はポテンシャルがあると思います。大阪とも近いことが大きいですね。その他には沖縄、福岡、北海道あたりですね。もちろん東京もありますが競争が激しいのが現状です。

民泊のファンドは弊社にとって新しい取り組みであり、楽天LIFULL STAYという実績のある企業と組んで進めているので、非常にいい商品になっていると思います。また今後も1つ目の商品がうまくいけば、2つ目、3つ目と商品を増やしていき、シリーズ化も検討しています。そういった弊社の動きも見て頂きながら、ご購入の検討をいただければと思います。

<最後に>

インターネットの普及により金融商品は、商品の多様化はもちろん、同社のように1万円~という少額でも始められる商品もどんどん増えてきている。そんな中でも、上場企業という盤石な経営基盤と、金融のプロフェッショナルが揃う同社の存在は、投資経験の浅い方や若年層にとって大きな安心材料になるだろう。また投資により、「町家再生」という日本の古き良き歴史に新たな生命を吹き込めるのも魅力だ。

今後もクラウドファンディング市場の流れだけでなく、同社の事業展開に注目していきたい。

■「SAMURAI」サービスサイトはこちら
■「SAMURAI証券」公式HPはこちら
■ 募集中の「大阪デザイナーズ民泊ファンド」ページはこちら

(HOTELIER編集部)

【転載元】クラウドファンディング×宿泊業がインバウンドニーズを支える。SAMURAI証券が展開する町家の再生事業 | HOTELIER(ホテリエ)|ホテル・旅館・インバウンド不動産投資メディア

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