新型コロナ感染症拡大の影響で民泊の事業収入が減少し、賃貸用物件へ転用する方が増加しています。
賃貸物件は定期的な家賃収入を得られるというメリットがありますが、転用の前に手続きや賃貸ニーズの把握等が必要です。民泊を賃貸用物件に転用するためには、まずは民泊を廃業した後に賃貸用物件として各種申請を行うという流れになります。
この記事では民泊を賃貸物件に転用する方法、必要な手続きや注意点を解説していきます。賃貸物件への転用を検討されている方はご参考下さい。
1.民泊の廃業手続きを行う
民泊を賃貸用物件に転用するためには、最初に民泊の廃業手続きを行います。
住宅宿泊事業法(民泊新法)で届出を行った場合、旅館業法(簡易宿所営業)の許可を受けた場合、国家戦略特別区域法(特区民泊)の認定を受けた場合の3つのケースにおける廃業手続き方法をご紹介します。
1-1.住宅宿泊事業法(民泊新法)で届出を行った場合
住宅宿泊事業法(民泊新法)で届出を行ったケースでは、「民泊制度ポータルサイト」内の民泊制度運営システムで廃業の申請を行います。
なお、廃業届を自治体に窓口で提出または郵送する方法でも届け出は可能ですが、各自治体では原則民泊制度運営システムを利用することを推奨しています。
廃業届は民泊制度ポータルサイトや自治体のホームページからプリントアウトする事が出来ます。その際に標識(営業許可証)を同封して返納する必要があります。
1-2.廃業後も宿泊者名簿は保管する必要がある
宿泊者名簿は、作成した日から3年間保存することが義務付けられています。廃業した後も同様に保存義務がありますので、3年間保存しましょう。
1-3.旅館業法(簡易宿所営業)の許可を受けた場合
旅館業法の許可により民泊を始めた方は、所在地を管轄する自治体や保健所に速やかに届出ましょう。自治体によっては廃止届出書を送付するとともに、許可書を返納する必要があります。
1-4.国家戦略特別区域法(特区民泊)の認定を受けた場合
民泊をやめてから10日以内に廃止の届出書を施設の所在地を管轄する都道府県知事(自治体)に提出します。自治体が定める廃止届出書に特定認定書を添付します。
2.賃貸物件へ転用するために必要な手続き
民泊から賃貸へと建物の用途を変更する際は、建築基準法上の申請と消防法の「防火対象物」として廃止届・開始届を出すケースがあります。
防火対象物とは火災被害を予防する必要があるとされる建物で、民泊と賃貸用物件は共に防火対象物となります。
また、建物の床面積や各自治体によって申請の必要可否が異なります。床面積やその他の要件は下記で詳細をチェックしておきましょう。
2-1.建築基準法上での用途変更を申請する
建物の床面積が200㎡を超える場合、用途変更の確認申請が必要となります。
ただし、民泊所在地の自治体によって対応は異なるため、床面積が200㎡以上の物件は用途変更の申請が必要であるかを問い合わせてみましょう。
2-2.消防法上の「防火対象物」としての用途変更の申請
消防法では火災予防の対象となる建築物を「防火対象物」として定め、用途や規模等に応じて、火災予防のための人的体制の整備や消火器やスプリンクラー等の設置、防炎物品の使用を義務付けています。
民泊と賃貸用物件は共に防火対象物となるため、民泊を始める際に防火対象物の使用届を提出している事になります。
ただし、住宅宿泊事業法(民泊新法)では床面積や家主の居住の有無等の火災危険性に応じて用途が判定され、共同住宅や一般住宅として届け出ている可能性があります。
用途変更する予定の建物の工事を行う際に届け出が必要な自治体や、民泊から共同住宅を含む用途変更で届け出が必要な自治体等、自治体によって対応が異なりますので、所在地を管轄する消防局に問い合わせてみましょう。
なお、届け出が必要な場合は、民泊として防火対象物の廃業届を提出した後、共同住宅の場合は防火対象物使用開始届を提出する流れとなります。この時に住宅宿泊事業法で「共同住宅」として届け出を出したケースでは、変更の手続きが不要となります。
3.民泊を賃貸部件に転用する際の注意点
民泊を賃貸物件に転用するにあたって、下記2点をおさえておきましょう。
- 転用した後に収益を出す事が出来るか
- エリアに適した賃貸住宅の形態の検討
特に①では家賃の相場や賃貸ニーズを把握し、収支シミュレーションを行う事が今後の経営で重要となります。賃貸物件として需要が多くない地域では、マンスリーマンションやシェアハウス等、別の形態での活用を検討してみましょう。
3-1.事前に賃貸に転用して収益を出せるかを調べる
賃貸用物件を始めるにあたって、地域住民のニーズを把握する必要があります。特に観光地では、民泊の需要は多いものの、住宅の需要は少ないという地域も存在します。始める前に周辺地域の賃貸ニーズをチェックしましょう。
入居者募集を行う不動産会社に聞き込みを行う、ポータルサイトで周辺の賃貸物件の空き状況や家賃相場を確認する等で、賃貸物件として転用した際の収益予測を立てることが可能です。これらの情報をもとに慎重にシミュレーションを行うことが重要となります。
3-2.賃貸住宅の形態を検討する
一口に賃貸住宅と言っても、居住用の賃貸物件を始めシェアハウスやマンスリーマンション等、貸し出し期間や建物の規模に応じて様々な形態が存在します。
例えば、賃貸物件として需要が多くない物件でもマンスリーマンションであれば借り手が付き十分な収益が出る可能性もあります。さらに時間貸しのシェアオフィスやレンタル倉庫等、様々な活用方法がありますので地域のニーズに合った形態で運営を始めましょう。
まとめ
民泊から賃貸用物件へ転用する際は、民泊としての廃業の届出を行った後必要に応じて建築基準法と消防法の用途変更手続きを行いましょう。
手続きを行う前に、物件の所在地域における賃貸需要や、どういった形態の賃貸物件が必要とされているかを調べておきましょう。
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