※特区民泊に関する最新情報は「特区民泊とは?認定要件やメリット・デメリットを解説」をご参照ください。
民泊特区とは?
2015年10月、東京都大田区が一定の条件下において「民泊」を認める条例案を公表したことで大きな話題を呼びました。これまで不特定多数の顧客を有料で自宅に宿泊させる、いわゆる「民泊」は旅館業法の厳しい規制下に置かれていましたが、大田区はいわゆる「民泊特区」の制度を活用することで旅館業法の適用除外という特例を受け、区内で民泊を認めようとしています。
この「民泊特区」とは一体何なのでしょうか?「民泊特区」は、正式には「国家戦略特別区域」として「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」を定めた区域のことを指します。非常に長く分かりづらい言葉ですので、一つ一つ解説していきます。
国家戦略特別区域とは?
国家戦略特別区域とは、安倍内閣が日本の成長戦略の柱の一つとして掲げている、地域振興と国際競争力の向上を目的として規定された経済特区のことを指します。「国家戦略特区」と省略されることもあります。
国家戦略特区では、そのエリア内に限って従来の規制を大幅に緩和することが認められています。現在国家戦略特区には東京圏(東京都・神奈川県の全部または一部、千葉県成田市)、関西圏(京都府・大阪府・兵庫県の全部または一部)、そして沖縄県や福岡県福岡市などが指定されています。
この国家戦略特区が、内閣総理大臣および都道府県知事から国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業についての認定を受けることにより、同事業については旅館業法の規定が適用されないというルールになっています。
国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業とは?
それでは、「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」とは一体何なのでしょうか?非常に長くて分かりづらいですが、これは下記のように定められています。
国家戦略特別区域において外国人旅客の滞在に適した施設であって賃貸借契約に基づき一定期間以上使用させ、滞在に必要な役務を提供するものを経営する事業として政令で定める要件に該当するもの
抽象的な表現が続いており、上記だと「外国人旅客の滞在に適した施設とは?」「一定期間とは?」「滞在に必要な役務とは?」など様々な疑問が生まれてきます。それぞれについて、簡単にポイントだけ解説しておきます。(詳細については「国家戦略特別区域における旅館業法の特例について」(厚生労働省)を参考にしてください。)
外国人旅客の滞在に適した施設とは?
色々と条件はありますが、一番のポイントは一居室の床面積が25平米以上であること(ただし、施設所在地を管轄する都道府県の知事が外国人旅客の快適な滞在に支障がないと認めた場合においてはこの限りではありません)という点です。あまりに狭いワンルームなどは特例の対象外なります。
一定期間とは?
一定期間以上とは「7日から10日までの範囲内において条例で定める期間以上」のことを指します。つまり、いくら民泊特区であったとしても、7日未満の宿泊の場合は特例の適用外となるため注意が必要です。
滞在に必要な役務とは?
滞在に必要な役務としては、施設の使用方法に関する外国語を用いた案内、緊急時における外国語を用いた情報提供などが挙げられています。特例はあくまで外国人の宿泊ニーズを満たすためのものであるという点がポイントとなっています。
外国人滞在施設経営事業に関する通知
厚生労働省は民泊特区における外国人滞在施設経営事業を円滑に進めるため、自治体などからの要望も踏まえて2015年7月31日にテロ対策や近隣住民とのトラブル防止など、想定されるリスクに対する未然の防止策をまとめた通知を出しました。
その中には「滞在者名簿の備付け、旅券の呈示を求め、写しを保存、対面等により本人確認を実施、旅券の呈示拒否等は警察に通報 等」「近隣住民の不安を除去するための措置:近隣住民に事前に説明、苦情窓口を設置し対応、滞在者へ廃棄物処理方法を説明 等」などが盛り込まれており、誰がいつ宿泊したのかを管理できる体制を整備すること、近隣住民の理解とのコミュニケーションをしっかりとることがポイントとして含まれています。
民泊条例を可決した民泊特区の一覧
民泊特区の対象には東京圏(23区の一部、神奈川県、千葉県成田市)、関西圏(大阪府、京都府、兵庫県全域)が含まれていますが、実際に条例を成立させた自治体は下記となっています。大田区をモデルケースとして、今後どこまで特区を活用した民泊条例が全国に広がるか、注目が集まっています。
(Livhub 編集部)
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