別荘を民泊として期間貸しする手順は?旅館業法における民泊転用を解説

別荘をお持ちの方は、利用しない期間に民泊施設として貸し出すことで、宿泊料が収入として手に入り、物件を有効に活用できます。

しかし、別荘の民泊転用では旅館業法の「簡易宿所営業」で許可を取る必要があります。

許可を取るための要件や認められないケース、民泊転用のメリット・デメリットを解説していきます。

1.別荘の民泊転用で必要なこととは?

別荘を民泊として貸し出ししたい場合、旅館業法における許可が必要です。旅館業法では営業形態が複数ありますが、多人数での利用を目的とした「簡易宿所」で許可を取りましょう。

簡易宿所は他の営業形態ほど要件が厳しくない上に、手続きが煩雑ではないため民泊運営には適しています。旅館業法における許可が必要な理由や「簡易宿所営業」の許可を取るための要件や認められないケース、手続きの流れを見ていきましょう。

1—1.旅館業法における許可を得る

民泊運営をするには、旅館業法での許可、国家戦略特別区域法(特区民泊)の認定、住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出のいずれかが必要となります。

厚生労働省の「遊休期間の別荘の貸出しに係る建築基準法の用途規制について」という通知文書では、「住宅として建築された別荘を、所有者が利用しない遊休期間中に他人に有償で貸し出す場合は、旅館業法による許可が必要」と明記されています。

土地や建物の使い道(用途)・形態は、建築物を合理的に利用し都市活動を機能的に行うために建築基準法や都市計画法で定められており、異なる用途で利用することができません。

建物の高さ、商業施設、住宅といった使い道の決まりを地域ごとに設け、ルール通りに建築することを用途規制と言います。別荘を利用しない間に民泊として運営する場合、本来の使い道とは異なり、用途規制に抵触することになるため、旅館業法の許可が必要となるのです。

【関連記事】旅館業簡易宿所営業とは?許可要件や申請手続き、メリット・デメリットを徹底解説

1-2.「簡易宿所営業」の許可を取る

旅館業法における営業の形態では「簡易宿所営業」、「旅館・ホテル営業」「下宿営業」の3種がありますが、民泊を運営する際は許可要件が最も容易である簡易宿所営業が適しています。

簡易宿所営業は宿泊する場所を多人数で共用する営業形態で、山小屋、ユースホステル、カプセルホテル等が該当します。

許可を取るためには使用する施設の構造・設備が、以下の要件を満たしておく必要があります。

  • 客室の延べ床面積は 33㎡(宿泊者の数を10人未満とする場合には1人当たり3.3㎡)
  • 階層式寝台(2段ベッド)を有する場合には、上段と下段の間隔がおおむね1m以上であること
  • 適当な換気、採光、照明、防湿および排水の設備を有すること
  • 宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有すること(施設に近接して公衆浴場があるといった入浴に支障をきたさないと認められる場合を除く)
  • 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること
  • 適当な数の便所を有すること
  • その他都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合すること

自治体によっては玄関帳場を義務付けていますので、所在地の自治体の役所やホームページで確認しておきましょう。

また旅館業法には「衛生等管理要領」という施設の衛生向上を目的としたルールが存在します。

簡易宿所営業では頻繁に不特定多数の宿泊者が入れ替わることが想定されるため、衛生上のリスクを防止するために、各自治体において細かな基準が設けられています。別荘の所在地を管轄する自治体に問い合わせてみましょう。

自治体や施設の状況等により異なりますが、一般的な許可取得までの流れは、①自治体の担当窓口への事前相談、②許可申請、③保健所職員などによる立ち入り検査、④許可となります。

許可を取り民泊サービスを提供している間は、施設が衛生基準に従って運営されているかどうか、自治体から報告を求められることがあります。場合によっては立ち入り検査が行われます。

1-3.営業許可が認められないケース

以下の4項目に当てはまる場合、都道府県知事に申請があっても、旅館業法上営業許可を認められない可能性があります。

あらかじめチェックしておきましょう。

  • 施設の構造・設備が政令で定める基準に適合しない
  • 施設の設置場所が公衆衛生上、不適当である
  • 申請者に前科がある
  • 施設の設置場所の周囲おおむね100m以内に学校、児童福祉施設、図書館等があり設置により清純な施設環境が害される

1-4.観光地が民泊転用を禁止している事例

別荘の多い長野県軽井沢町では、観光都市・保養地として自然環境の保護と秩序を保つまちづくりのため、不特定多数の人間が出入りする環境となる民泊の運営を禁止しています(軽井沢町「景観・環境保護」を参照)。

なお「貸別荘」は町が設定した基準をクリアした場合は認められており、不特定の者に1ヶ月以上の賃貸を行う戸建ての住宅である、町内に常駐する管理運営責任者を定める、転貸は不可などの9つの基準が設けられています。

貸別荘を行う場合は、従来の別荘から貸別荘へ用途を変更する事になりますので、土地利用行為について事前協議が必要となります。

2.別荘を民泊として期間貸しするメリット・デメリット

別荘を民泊として期間貸しする事で、宿泊料が収入として手に入る、放火や空き巣などの被害に遭う可能性が少なくなるといったメリットがあります。

一方で自身の別荘利用が制限される可能性がある、清掃コストや業者に委託する時は委託コストがかかるというデメリットがあります。

2-1.メリット

別荘を民泊として貸し出す事で、旅行者が宿泊した際は宿泊料が収入として手に入ります。例えば7~9月の3ヶ月程度に避暑として利用した宿泊客に貸し出しを行い、毎年利用して貰えると年間を通じて定期的な収入が入る可能性があります。

また別荘を空いている家として放置しておくと、空き巣や放火の被害に遭う可能性が高くなります。窓を閉めっぱなしにしており風を通さないため家の劣化が早くなり、虫や動物が住みつきやすくなってしまう事があります。

民泊として期間貸しすることで上記のリスクが軽減されます。

2-2.デメリット

別荘を民泊として貸し出すデメリットは、自身の別荘利用が制限される可能性がある事です。

旅行客が主な宿泊客となる民泊では、お盆休みや正月、ゴールデンウイーク等の長期休暇に需要が高まる傾向があります。同じ時期に所有者本人が別荘の利用を希望する可能性が高く、状況によっては別荘の利用ができない事態が想定されます。

また別荘を貸し出すにあたり、清掃業者への清掃依頼が必要なケースがあります。近場に居住しており、清掃の時間が取れる場合は自身で掃除が出来ますが、多くの場合別荘は遠方にあるため業者に清掃をしてもらう料金が発生します。忙しい方は自身で清掃をすることが難しいでしょう。

別荘の民泊運営を代行する業者もあり、旅館業法の申請や管理運営を依頼できます。コストが発生しますが、自身で申請や管理・運営が難しい場合には検討してみましょう。

3.まとめ

別荘を期間貸しするためには、旅館業法での簡易宿所としての許可が必要となります。

一定の要件を満たし申請を行う必要がありますが、宿泊料が収入となり空き巣や放火のリスクを軽減できる等のメリットがある期間貸しは無駄のない活用方法と言えるでしょう。

忙しい方や管理・運営が難しい方は代行業者に依頼することができます。民泊施設として期間貸しを行い、別荘の有効活用を検討してみましょう。

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