これから民泊のホストになろうかどうかを検討している方にとって何より一番気になるのは、やはり「民泊のホストとして自分の家や部屋を貸し出すと、一体どれくらいの収益が出るのか」という点だと思います。
民泊は副収入を得る上で非常に適した仕組みであり、副収入ではなく不動産投資の視点から考えてもその収益率は非常に魅力的です。ここでは、民泊の収益について、実際の事例なども基にしながらご紹介していきます。
収益を決めるのは「宿泊単価」×「宿泊日数」
民泊のホストとして収益を最大化する上でまず頭に入れておきたいのが、下記の方程式です。
収益(売上)= 宿泊単価 × 宿泊日数(月の稼働率)
例)240,000円 = 10,000円 × 24日(80%)
実際にはコストとして家賃や日用品の補充代、清掃費用、代行会社を使用する場合は運用代行費用などがかかってくるため、最終的に手元に残る利益は上記の収益からそれらのコストを差し引いた金額となります。しかし、運用にかかるコストはそれぞれの方で条件が異なると思いますので、ここでは簡素化して収益(売上)のことだけを考えて説明します。
上記の方程式は、言われるまでもなく当たり前の話だと思います。収益を上げるためには「宿泊単価」を上げるか、「宿泊日数」を増やすかのどちらかしかありません。しかし実際の運用となると、話はそう簡単ではありません。
なぜなら、宿泊単価をその地域の相場よりも高く設定すればするほど、予約上は不利になるわけですから、宿泊日数は減る可能性があるからです。つまり、両者は別個の要素として切り分けて考えることができないのです。
だからといって、今後は宿泊日数を最大化しようと宿泊単価を相場より思い切り下げるというのも得策ではありません。毎月の宿泊日数には30日、31日というそもそもの限度があるからです。稼働率を100%まで上げようとすると、本当はより高い価格でも宿泊してくれたはずのゲストを安く泊めてしまうという可能性も出てきます。この場合も、本来得られたはずの収益を取り逃していることになります。
また、こうした宿泊などホスピタリティ業の難しい点は、必ずしも価格が安ければ安いほどよいとは限らないという点です。ホテルの価格にも1泊数千円から数万円まで幅があるように、高い価格を支払ってでもそれに相応するサービスを受けたいというゲストもいるのです。
こう考えると、非常にシンプルな方程式の中にも様々な要因が含まれていることが分かります。民泊の収益を想定するのは、そう簡単なことではないのです。そこでここでは、「宿泊単価」と「宿泊日数」を更にブレイクダウンして、それぞれの数値を構成する要素について更に深く考えていきます。
宿泊単価を決める要素は何か?
そもそもの宿泊単価を設定する上では、下記のようなポイントを考慮しなければいけません。
- 物件がある地域の宿泊価格相場
- 競合の物件数
- 競合の物件の稼働状況
不動産価格が地域によって大きく異なるように、民泊の宿泊相場も地域によって大きく異なります。首都圏エリアは価格も高いのですが、そのぶん競合物件も多くなります。また、地方エリアや不便なエリアは価格が安い代わりに、競合物件は少ないため稼働率は高くなる可能性もあります。
宿泊日数を決める要素は何か?
次に、宿泊日数を決める要素を見ていきましょう。宿泊単価とは異なり、宿泊日数は自分自身でコントローすることはできません。宿泊日数を伸ばすための要素をブレイクダウンすると、下記のようになります。
月間宿泊日数 = ゲストの物件閲覧数 × 予約率 × 平均宿泊日数
例)24日 = 600回 × 1% × 4日
ゲストの平均宿泊日数はホストがコントロールできる部分ではありませんので、ここでも宿泊日数を上げるためには、そもそもの「ゲストの物件閲覧数」を増やすか、「予約率」を上げるか、のいずれかの方法しかありません。「ゲストの物件閲覧数」を増やす上でできることは、下記のような作業となります。
- Airbnbなど民泊サイトの検索結果における上位表示対策
- 複数の民泊サイトに登録する
民泊サイトの検索結果において上位表示をするためには様々な要素に考慮して最適化を進めていく必要があるため、素人では難しいというのが正直なところです。しかし、意外と盲点になっているのが、二つ目の「複数の民泊サイトに登録する」という点です。民泊といえばほとんどの人が真っ先に思いつくのがAirbnbですが、世界にはAirbnb以外にも様々な民泊サイトが存在しています。
例えば、日本を訪れる観光客の約2割を占める中国人観光客は、Airbnbだけではなく「途家網」「住百家」「自在客」など中国初の民泊サイトを活用しています。こうした点まで配慮して自身の物件の露出を増やせるかどうかはとても重要となります。
また、予約率を上げるという点では、魅力的な写真や説明文が用意されているか、評価の高いレビューが集まっているか、魅力的な価格設定か、などさらに多くの要素が絡んできますので、一朝一夕で予約率を上げられるわけではありません。民泊運用代行会社の協力も得ながら、ゲストのことを第一に考えて細部までこだわった運用を心がける以外に近道はないでしょう。
収益シミュレーションをしてみよう!
こうして考えていくと、物件を運用する前から収益がどのぐらい上がるのかを自分自身だけで見積もるのは非常に難しいということが分かります。しかし、心配は要りません。そこで役に立つのが、Airbnbが提供している収益シミュレーションツールです。
Airbnbでは、これからホストを始める方向けに、物件の住所と貸出日数、物件タイプを入力・選択するだけで毎月の売上相場を算出してくれるシミュレーションツール、「まずはご近所さんをチェック」を提供しています。まずはこのツールを活用して、自身の物件がある地域の相場を知るところから始めましょう。
ただし、ここでの注意点は、自身で選択した滞在日数が必ずしも担保できるとは限らない点です。また、金額は当然ながら具体的な立地やシーズン、そのエリアで開催予定のイベントなど様々な要因によって変わってきますので、あくまで参考程度に活用しましょう。
民泊運用代行会社に見積もりを依頼するのも手
Airbnbの「まずはご近所さんをチェック」だけでは心もとないという方は、民泊運用代行会社に見積もりを依頼するのも手です。代行会社の中には、物件の住所を共有するだけで実際にどの程度の収益が見込めそうか、いくつかのパターンを基にシミュレーションして無料で教えてくれる会社もあります。
Airbnbの「まずはご近所さんをチェック」よりはより詳細かつ具体的なシミュレーションデータとアドバイスが得られるのでおすすめです。
収益事例
もっと具体的な収益の事例が知りたいという方のために、ここではLivhub編集部が代行をお手伝いしている2物件の事例をご紹介します。
事例1
家賃:111,000円・収容人数:5名・駅徒歩:徒歩3分・面積:40.51㎡・間取り:1DK
- 月平均売上:423,000円
- 平均稼働日数:25日
- 売上/家賃:381%
事例2
家賃:80,000円・収容人数:5名・駅徒歩:徒歩7分・面積:34.50㎡・間取り:1DK
- 月平均売上:386,000円
- 平均稼働日数:27日
- 売上/家賃:482%
いずれの事例においても、家賃を大きく上回る売上を上げていることが分かります。もちろん、ここまでの売上を上げるためには、そもそもの物件の立地条件に加えて、内装・インテリアの工夫、プロのカメラマンによる写真撮影、相場に応じた適切な価格設定、ユーザーのレビュー管理など、様々な要素が必要となります。
しかし、逆に言えば、しっかりとした運用を行えば、副収入とはいえども一般的な不動産投資の利回りを大きく上回る収入を期待できるのも民泊ホストの魅力だと言えます。
海外(米国ニューヨーク市)での事例
最後に、参考までに海外のホストの収入事例についてもご紹介したいと思います。Airbnbは2015年12月1日、米国ニューヨーク市でAirbnbを活用して部屋を貸し出しているホストに関するデータを一般に公開しました。
行政区 | 年間収入の中央値(A) | 宿泊日数の中央値(B) | 宿泊単価(A/B) |
クイーンズ | 504,836円 | 53 | 9,525円 |
ブルックリン | 483,364円 | 41 | 11,789円 |
アウター・マンハッタン | 800,076円 | 42 | 19,049円 |
セントラル・マンハッタン | 664,290円 | 41 | 16,202円 |
スタテンアイランド | 636,962円 | 61 | 10,442円 |
ブロンクス | 396,378円 | 54 | 7,340円 |
ニューヨーク市全体 | 623,420円 | 53 | 11,763円 |
DATA ON THE AIRBNB COMMUNITY IN NYC“Median Nights Booked Per Listing in the Past Year、Most Hosts Earn a Small”、”But Substantial Amount of Supplemental Income”を基に作成(※1ドル=122円で計算)
上記を見ると、ニューヨーク市でAirbnbを利用して部屋を貸し出している人の年間収入の中央値は約62万円となっており、年間宿泊日数の中央値は53日となっていますので、毎週1~2日程度部屋を貸し出すことで、毎月5万円程度を副収入として得ているイメージになります。また、データを見ればわかる通り、ニューヨーク市の中でもエリアによって年間収入や単価も大きく異なることが分かります。
副収入としては年間62万円でも十分すぎる金額だと言えますが、より本格的に収入を増やしたいホストの方は、民泊代行サービス会社などを上手に活用しながら宿泊日数を増やしていくことで、さらなる収益を目指すことが可能です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?Airbnbをはじめとする民泊サイトを活用してホストになることでどのぐらいの収益を出すことができそうか、何となくイメージを掴んで頂けたでしょうか?
民泊はやれば必ず利益が出るというものではありません。民泊運用を開始する前に、自身の物件から期待できる収益がどの程度なのかをしっかりと把握し、戦略的に運用することが求められます。
民泊運用で利益を出すためには戦略的な運用計画、優れた物件探し、ゲスト満足度を高めるアメニティの充実まで様々な点に意識を巡らせる必要があります。ぜひ下記サービスなども利用しながら入念な準備を行いましょう。
おすすめの民泊関連ソリューション
民泊運用に役立つおすすめのサービスを厳選ピックアップし、ご紹介しています。民泊ホストの皆様はぜひご活用ください。
(Livhub 編集部)
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