中国からの旅客が年々増える日本。JNTOの発表によると、2017年は約735万人、2018年は約838万人と前年比で約14%増加し、全訪日客数3,119万人の4分の1以上を占め、最多の訪日客数となっています。そのため、民泊市場に限らず、中国からの訪日客は日本の観光市場全体で重視されています。
その中国で最大のOTAである「Ctrip」の傘下に、中国民泊仲介サイト大手の「途家(tujia)」があります。途家は2017年2月に日本進出を公表し、同年3月に日本版ホームページを開設、8月に楽天グループの民泊事業会社である楽天LIFULL STAY株式会社と業務提携、2018年10月には新潟県魚沼市と協定を締結するなど、日本での民泊に関する取り組みを進めてきました。
今回、Livhub編集部は、その途家が2019年、どのように日本国内でのサービスを展開していくのか、CBOの李珍妮(リー・ジェンニー)氏にお話しを伺ってきましたので、民泊市場に携わるホストや事業者の皆様はぜひお読みください。
途家の沿革と現状
途家は2011年に創業し、Ctrip、HomeAway、Ascotの出資を受け、今では中国一の民泊プラットフォームとなりました。世界で80万のリスティング数を抱えていた2017年時点で時価総額10億ドルのユニコーン企業となりました。そして2018年時点で中国国内のリスティングの数は100万件以上、海外は40万件以上、時価総額は30億ドルとなりました。売上も2017年に前年比の5倍、2018年に前年比の4倍と成長しました。途家の利用拡大にあたり、Ctrip、Qunar、Mayi、WeChat、芸龍(イーロン)、アリババのホテルグループなど、さまざまなチャネルにも展開しています。2019年1月時点における途家の世界全体のリスティング数は150万、そのうち中国は100万、日本は2万を超え、また、ホスト数は世界で20万以上、そのうち中国は15万以上、日本は1万以上です。
途家は、Ctripグループの戦略の一つとして民泊に特化しています。そして、プロのITチームが集客に携わり、民泊分野ではトップレベルのゲスト数、ホスト数を誇るほか、データベース開発、IoTの推進、スマートチェックイン等についても世界最高レベルの民泊チームが対応している点が強みです。また、弊社のカスタマーサービスは24時間365日対応し、ゲスト、ホスト双方の満足度もトップクラスです。
バケーションレンタルビジネスにおける重要なポイントとは
バケーションレンタルのマーケットで成功するために最も重要なのは、「ゲストの心を捉えた、よりよいサービスを開発すること」です。そのため、弊社からは、ゲストがどのような部屋を好むのか、どのようなサービスを望んでいるのかをホストに伝えることで、よりよいサービスを提供してもらえるようにしていきたいと考えています。
さらに、民泊に対する「社会的な認識」を捉えることも重要です。そこには、例えば、日本における民泊新法開始、中国における西安市との提携といった法的な対応ももちろん含まれます。また、日本におけるホテルや旅館と民泊との共存関係についても検討しながら社会に貢献していきます。
日本の民泊マーケットに進出したのはゲストからの高い需要があるためです。弊社の方針として、アジアでは日本、タイ、韓国の3つを重視しています。日本では、住宅宿泊事業法が施行された2018年6月15日を機に民泊物件数は減少しました。しかし、今後のトレンドとして、東京はオリンピック、大阪は万博の開催とカジノ構想などがあり、住宅宿泊事業法施行前の水準を超えるほどの民泊物件数となる可能性があると予測しています。また、特に現在、日中関係は良好で、ビザの発給緩和により中国から日本に訪れやすくなっているだけでなく、民泊新法施行を機に高品質なサービスを提供できるプロの民泊ホストが増えていることも、日本でバケーションレンタルビジネスが拡大する要素だと考えています。
なお、日本の民泊新法については制定する必要性があったと認識しています。そして、インバウンド施策と観光立国を掲げる日本政府として、実行力がある、よい決定だったと捉えています。ただし、特区については、より多くの場所が指定されるのが望ましいと考えています。
ゲストに喜ばれる民泊物件とは
まず、利用人数からみると、2人で宿泊する場合は民泊よりもホテルを選択する傾向にありますが、民泊物件では部屋、ベッドが多く、ファミリーで滞在しやすいタイプが人気です。次に、訪日回数別にみると、初めての場合は民泊ではなくホテルに宿泊する傾向にありますが、民泊物件に宿泊する場合はやはり多人数で宿泊できる物件を求めています。そして、2回目以降に訪れる場合は、現地でのローカルな体験への需要から、民泊に宿泊する傾向があります。ロケーションについては、例えば、京都であれば京町家や、上海は石庫門、北京は四合院など、特別な住居に宿泊が集まる傾向があります。
中国からのゲストに人気がある日本の地域は、初回は東京、大阪、京都です。理由は、直行便があり、訪れやすい有名都市であるためです。そして、2回目以降は、大都市も含めたその他の都市に訪れる傾向があります。大都市にはバスターミナルや電車の路線が複数あるため、経由地として立ち寄ります。2018年のデータによると、2回目以降は60%が大都市以外を訪れ、例えば、鎌倉、軽井沢、箱根から伊豆エリア、またスキー利用では北海道、長野、高山エリアなどに人気が集まりました。
日本のホストが中国のゲストを迎え入れるときに心がけていただくことで、よりよい宿泊体験を提供できるポイントがあります。それはゲストとなる中国人に「いろいろ教える」ということです。中国から来たゲストは日本のルールを知らないことが多いので、あらかじめ日本での習慣やTipsをカタログに記載するなどして伝えていただくことで、双方がよりよい体験を共有できます。これは中国人に限らず、欧米人や日本人でも同様ですが、相互理解を深めることが大切です。
現在の途家の利用状況をみると、需要に対して日本の民泊物件数はまだ不足していますので、これから民泊を開始しようとしている方にはぜひ物件を途家のリスティングとして登録していただき、より多くのゲストを迎え入れていただければと考えています。
2019年の日本市場における戦略
2019年は日本を最も重要な市場と位置付け、日本法人では第一にホストを増やすことに注力します。同時に、中国国内を中心に、海外からのゲストの増加も図ります。それらの施策を展開するにあたり、政府、自治体、企業との連携、ホストコミュニティの構築を進めます。また、重点地域は東京、大阪、京都をはじめとし、それらの大都市に隣接した地域です。
続いて、自治体や企業、ホストコミュニティとの連携についてお話しします。まず、自治体との連携にあたっては「お互いに求めていること」が重要です。自治体がその地域に誘客したい、地方創生につなげたいと考える一方で、途家は民泊ホストを増やし、その地域に広告宣伝等も含めて協力できることがあれば実施したいと考えています。それらの想いが合致することが重要だということです。途家としては、単に送客数だけではなく、送客の質も追求したいと考えています。
次に、企業との連携については、すでに連携している楽天LIFULL STAY株式会社や株式会社宅都ホールディングスとともに、楽天とはIT、IoTに関して、宅都とは大阪での一棟まるごと民泊に関する事業を進め、現地企業とも連携していきます。さらに、ホストコミュニティとの連携については、これまでにホストミーティングを3、4回開催していますが、企業とのタイアップも含め、継続して月2回ほど開催する予定です。また、ソーシャルメディアを通じたホストのサポートも進めていきたいと考えています。
最後にホストのサポートについてお話しします。現在、途家はホスト、ゲストからの質問に対応するカスタマーサポートを設置し、24時間365日体制でホストをサポートしています。またIoTによるスマートチェックイン、荷物の配送、リスティング掲載用の無料の写真撮影サービス、リスティングの登録代行なども実施しています。今後、ホストコミュニティの形成により、ホスト同士での事例共有や問題解決を図ることができるように仕組みを整えていきます。
日本の民泊ホストに向けたメッセージ
私たちには大きな新しい未来が待っています。途家はホストとして皆様が参画してくれることを楽しみにしています。できる限り、ホストの皆様がよりよく、ベストな運用ができるようサポートしていきます。
中国語ver
英語ver
編集後記
今回、途家CBOの李珍妮氏にお話を伺ったことで、途家は2019年、日本の民泊市場に最も注力すること、そして途家にリスティング(物件)を掲載する民泊ホストの増加を図るべく、企業、自治体、ホストコミュニティとの連携を深めていくことがわかりました。途家は民泊ホストへのサポート体制も充実しており、例えば日本語と英語によるサポートが受けられるほか、リスティング掲載のための無料での物件撮影、リスティングの登録代行も行うなど、魅力あるサービスがそろっています。これから新たに民泊ホストとして活躍したいオーナーや事業者の皆様は、中国をはじめとしたアジア各国からの訪日客の受け皿となるべく、途家を活用してみてはいかがでしょうか。
※途家を活用してゲストを集客する場合、途家のホスト向け管理システムである「Waka」に登録する必要があります。詳しくは「Waka」のウェブサイトをご確認ください。
【ウェブサイト】Waka(途家の海外ホスト向けの管理システム)
【関連ページ】途家(Tujia)
(Livhub編集部)
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