空き家を相続すると維持管理コストや、防犯上の問題や特定空き家の対象となってしまうなど様々なリスクがあります。相続した空き家の資産価値が少ない場合や、利用の予定がない場合に、相続放棄を検討する方も少なくないのではないでしょうか?
ただし、空き家を相続放棄するにあたっては、管理責任について注意したい点もあります。本記事では、注意点を踏まえ、空き家を相続放棄するか相続するかの判断ポイントについて解説します。
1.空き家の相続放棄の際、考えるべきポイント
空き家を相続放棄するか相続するか、について判断するときに、考えなければならないポイントと手続きには次のようなものがあります。
- 空き家を含めた相続資産・負債全体の価値を見積もる
- 空き家を相続する他の相続人がいるかどうか
- 相続財産管理人の選任と国庫への帰属
まず、空き家を含めた他のすべての相続資産・負債の価値を見積もることが重要です。その価値によっては、相続した方が有益な場合もあります。
次に、空き家を相続する他の相続人がいるかどうか、が判断ポイントになります。いない場合は、空き家の相続放棄をしても、管理責任が継続するためです。
三つ目に、管理責任を放棄するかどうか、を判断します。管理責任を放棄する意思が固い場合、相続財産管理人の選任手続きを経て、最終的には財産を国庫へ帰属させることになります。
以下で、ポイント・手続きごとに詳述していきます。
1-1.空き家を含めたすべての相続資産・負債の価値を見積もる
空き家の相続放棄を考える際、まずは、相続放棄の法的枠組みをベースに判断することが重要です。
相続放棄とは、資産や負債のすべての相続権を放棄し、相続人の立場でなくなるということを意味します。
放棄の方法としては、一部の資産や負債だけを放棄するということはできないのが原則ですが、相続によって得た資産の限度で負債を受け継ぐ限定承認という方法もあります。ただし、限定承認手続きは相続放棄手続きに比べて手続きが煩雑で時間や費用もかかります。
空き家を含め、相続人が受け継ぐべき被相続人資産・負債全体の価値を見積もったうえで、明らかに負債の価値が空き家の価値より大きい場合は、相続放棄をした方が有利と言えるでしょう。
資産と負債のバランスを把握するためにも、不動産一括査定サイトなどの査定サービスを活用し、空き家の客観的な資産価値を調査しておきましょう。不動産一括査定サイトでは複数の不動産会社の査定を同時に受けられるため、効率的に査定価格を知ることが可能です。
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一方、空き家以外に思い入れがあり、引き継ぎたい価値のある資産がある場合は、相続放棄をすると、全ての資産を引き継ぐことができなくなってしまうので注意が必要です。また、空き家を含め、資産の価値が負債の価値を上回るか微妙な場合は、限定承認が有効と言えます。
なお、相続放棄をするには、相続開始を知ってから3カ月以内に家庭裁判所に「相続放棄の申述」をおこない、それが受理されると、その相続人は相続人でなかったことになります。
相続放棄は、その相続人一人でおこなうことができ、他の相続人との遺産分割協議などにも参加する必要はなくなります。ただし、限定承認は相続人全員が共同で行わなければならないとされています。
このように、まずは、相続資産・負債の全体の価値から、空き家の相続放棄の有利・不利を判断することが大切です。ただし、相続資産が空き家しかなく、その空き家を相続すると維持管理コストが嵩んでしまうといった場合、他の条件をも考慮したうえで相続放棄を検討するとよいでしょう。
1-2.空き家を相続する他の相続人がいるかどうか
空き家を相続すると、空き家の維持管理コストを負担するほか、その空き家の管理責任を引き継ぐことになります。もし、適切に管理しなかった場合、空き家が壊れたことが原因で近隣住民や通行人に損害を与えてしまい、損害賠償請求を受ける可能性があります。
また、近隣環境が悪化することで苦情が来たり、空き家自体が犯罪や放火に巻き込まれたりする可能性もあります。
空き家の相続を放棄すると、空き家にかかる固定資産税を支払う義務からは解放されます。しかし、上記のような責任やリスクから即座に解放されるのか、というと、必ずしもそうとは言えません。
民法第940条において、相続を放棄した者も放棄した相続財産の引継ぎ先や管理者が管理を始めるまでは、その財産の管理を継続しなければならない、とされているためです。
自分が相続放棄をしても、他に相続人がおり、その空き家を相続するのであれば空き家はその相続人が相続し管理することになるので、管理責任を考慮する必要はないといえます。
しかし、他に相続人がない場合、あるいは相続人全員が相続放棄した場合、次の引継ぎ先を選定するまではその空き家の管理責任が残ることになります。
なお、国土交通省は、相続放棄した者も、空き家対策の推進に関する特別措置法第3条に定められている「管理者」に該当するとしており、同法に基づく空き家の管理についての助言・指導又は勧告がおこなわれる可能性もあります。
1-3.相続財産管理人の選任と国庫への帰属
空き家の相続を放棄し、管理責任をも完全に放棄したい、というときは、相続財産管理人の選任手続きを行うことになります。
相続財産管理人の選任手続きは、家庭裁判所に申し立てることによって行います。申し立ての際には、相続財産管理人の報酬に充当するための予納金が数10万円~100万円程度必要になります。
相続財産管理人は、相続財産や特別縁故者の調査など、必要な手続きを行ったうえで、民法第959条により残った財産を国庫に引き継ぐことになります。
相続財産管理人を選定し所定の手続きを経れば、相続放棄した空き家を国庫に帰属させ、管理責任からも解放される可能性があると言えます。
ただし、国庫に帰属(寄附)するためには、「一定の資産価値がある」とともに、管理コスト増大防止の観点から「売却等が容易な不動産である」ことが基本要件とされています。負債となってしまった空き家を無条件に国庫へ帰属できる制度ではない点に注意が必要です。(※財務省理財部「引き取り手のない不動産への対応について」を参照)
まとめ
空き家を相続放棄する際、他の相続人がいない場合は、管理責任が残るので注意が必要といえます。管理責任を放棄したい場合は、相続財産管理人を選定し、国庫に引き取ってもらうことを検討できますが、不動産に資産価値がない場合において容易ではありません。
空き家を相続放棄するか相続するかは、相続時に判断することになります。出来れば相続発生の事前から被相続人の資産状況について確認をしておき、話し合いを進めておくことも重要です。相続放棄するか相続をするかは、本記事を参考にして、慎重に判断しましょう。
※この記事は金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」より転載された記事です。
【元記事】https://hedge.guide/feature/vacant-house-inheritance-abandonment-point.html
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