浄化槽付き物件の売却手順と注意点は?撤去する費用や売却のポイントも

下水道が整備されていない地域では、汚水処理をするための浄化槽付きの物件というものがあります。

この浄化槽付き物件を売却する場合、浄化槽を撤去するかしないかで別途費用が必要になったり、買主とトラブルに発展したりすることもあるので、売却手順のポイントをしっかりと押さえておくことが大切です。

この記事では、浄化槽付き物件の特徴、売却する方法、注意点について詳しくご紹介するので、浄化槽付き物件について詳しく知りたい方や、売却を検討している方はご参考ください。

1.浄化槽付き物件の特徴

浄化槽は下水道が整備されていない地域で、汚水処理をするために設置されている装置です。設置場所は家の裏側や側面、あるいは車庫の中などが中心です。

以前は水洗トイレからの汚水のみを処理する「単独処理浄化槽」が設置されていましたが、平成13年4月以降は台所排水や浴室排水なども処理できる「合併処理浄化槽」のみ設置できることになっています。

浄化槽は、微生物が汚水の有機物や汚れを分解し、最後に消毒をして川へ放流し海へ流れる仕組みとなっており、下水道が整備されていない地域での住宅では、浄化槽が必要となります。

浄化槽の機能を正常に保つためには定期的な維持管理が必要で、おもに「保守点検」「清掃」「法定検査」の3点を行います。

これらの浄化槽に関する管理は、「浄化槽法」によりルールが定められており、多くの場合において保守点検は4カ月に1度を目安に、清掃は年に1回行われます。

浄化槽の維持費用は処理方式や規模によって異なりますが、浄化槽の維持管理に関するアンケートをもとにした例として、次のようなデータが環境省より公表されています。

  • 清掃:25,000円
  • 保守点検:18,000円
  • 電気代:11,000円
  • 法定検査:5,000円
  • 計:59,000円

※環境省「単独処理浄化槽から合併処理浄化槽へ」を参照

下水道にこのような管理費はなく、使用水量に応じた使用料が発生します。単純比較はできませんが、年間コストとしては下水道の使用料よりも浄化槽の維持費のほうが5,000円~1万円ほど多くかかると見積もることができます。

1-1.空き家にする場合でも浄化槽の電源は落とさないようにする

浄化槽の電気代は年間11,000円ほどかかります。そこで、浄化槽付き物件を空き家とする場合、電源を落としていいのかという問題があります。

浄化槽の電源を落とすと、モーターが停止して酸素の供給が停止します。すると浄化槽内の好気性微生物が酸欠となり死滅します。これは臭いの発生原因となるため、浄化槽は使用しない状態であっても、電源を入れたままにしておいたほうが良いでしょう。

なお、停電によりモーターが停止した場合等でも、微生物は減少していきます。電源が回復すれば再び微生物は増えますが、浄化槽の汚水処理能力は低下しているので2~3日は臭いが続くこともあります。

1-2.浄化槽の正しい使い方

浄化槽内の微生物は何でも浄化できるわけではありません。そのため、浄化槽の正しい使い方を知っておくことも大切です。

まず、トイレについては下水道と同様にトイレットペーパー以外の紙類を流さないようにします。新聞紙のような紙はもちろん、ティッシュペーパーも微生物は分解できません。

台所からは、油のほか、ディスポーザーによる粉砕された野菜も流さないようにします。これらは微生物が処理できずに浄化槽内の汚れに繋がります。

また、便器の掃除をする際、洗浄剤を大量に使用すると浄化槽の機能が低下するので、特に塩素系の洗剤は使わないように注意します。

1-3.浄化槽から下水道に切り替えるタイミング

浄化槽は下水道が整備されていない地域で使用します。しかし、そのような地域であらたに下水道が整備された場合、浄化槽からの切り替えが必要になります。

これは下水道法や自治体の公共下水道条例で定められている義務なので、下水道の供用が開始されてから1年以内に切り替えなければなりません。この場合の切替・撤去費用は物件の所有者が負担します。

なお、撤去費用の一部を自治体が負担する助成制度もあるので、工事を行う場合には各自治体の窓口に問い合わせたり、ホームページをチェックしておくと良いでしょう。

2.浄化槽付き物件を売却する方法

浄化槽付き物件を売却する場合に知っておきたいポイントを見ていきます。

2-1.浄化槽付き物件の売却手順

浄化槽付きの物件を売却する場合、下水道が整備されているか、下水道が整備されていないかによって手順が異なります。

下水道が整備されていない場合、物件の買主が購入した後もそのまま生活できる状態にしておけるように、浄化槽は残したままで物件を売却することになります。

ただし、浄化槽の耐用年数は20~30年程度となるため、それを超える場合、交換が必要です。そのため浄化槽が設置されてから30年を超えるような物件を売却する際、売主が交換するのか、それとも買主が交換するのかを交渉する必要があるでしょう。

一方、下水道が整備されている場合、浄化槽から下水道へ1年以内に切り替えて接続する必要があります。そのため、売主が浄化槽を撤去して下水道へ接続するのか、あるいは買主にそれを行ってもらうかを決める必要があります。

切替費用を買主負担とする場合、その手間や負担を考慮して売却価格を値下げするなどの対応が求められることも考えられます。

空き家として放置していた浄化槽付き物件は、事前に浄化槽の清掃と点検を行うことが大切です。内部には汚泥などが蓄積し、浄化槽そのものの機能が低下している可能性があります。ブレーカーを落としていた場合、内部の微生物が死滅していることがあるので、再度、微生物放流が必要になります。

このように、浄化槽付き物件の売却は状況に合わせて注意すべきポイントや手順が異なります。実際に物件の状況を調査し、どのような手順で売却を進めていくのか慎重に検討することが重要です。

不動産会社によっては、浄化槽付き物件の売却実績が無いケースもあります。不動産一括査定サイトを活用して複数の不動産会社へ問い合わせ、浄化槽付き物件の売却実績のある不動産会社への依頼を優先するなど、工夫をしてみましょう。

主な不動産一括査定サービス

サイト名 運営会社 特徴
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2-2.浄化槽の撤去費用

下水道へ接続する場合、浄化槽は撤去することになります。なお、浄化槽は撤去せずに「埋め直し」をする場合もあります。埋め直しでは、浄化槽の中の汚水を取り除いた後、内部の部品などを取り除いて本体を地中に埋設します。

埋め直しは撤去よりも費用が少なくなりますが、土地を売却する際に浄化槽を掘り返して撤去しなければなりません。売却予定の場合は最終的に撤去が必要になるので、浄化槽はできる限り最初に撤去しておくほうが無難と言えるでしょう。

浄化槽の撤去費用は、大体5万円~10万円となります。ただし、下水道への切り替え工事も含めると、トータルで20万円~30万円ほどかかります。自治体によっては、浄化槽の撤去費用を補助してくれるので、撤去工事を依頼する前に確認しておきましょう。

浄化槽の撤去が終わった後は、都道府県知事に「浄化槽使用廃止届出書」を30日以内に提出しなければなりません。これを提出しない場合、浄化槽をいまだに使用しているとみなされ、点検や検査の案内が届くことになるので、注意しておきましょう。

3.浄化槽付き物件を売却する際のポイント

浄化槽付き物件の売却は、買主とスムーズに交渉することが重要です。そのための注意点やポイントをご紹介しておきます。

3-1.浄化槽の撤去費用で揉めた場合

浄化槽の撤去費用は買主と売主どちらが負担するかどうか交渉の上で自由に決めることが可能です。

しかし、買主側の印象として、「もともと不要なものである浄化槽の撤去費用をなぜ負担しなければならないのか」という不満が出る可能性もあります。

そこで浄化槽の撤去費用は売主が負担するとした上で、その費用を売却金額に反映させたり、契約不適合責任の期間を短くするなど、その他の条件面で調整することを検討してみましょう。

ただし、最終的な売却金額が買主にとって満足できる価格であるかどうかも重要です。買主が金融機関のローンを利用する場合、資金が足りずに購入自体が出来ない可能性もあります。無理に価格を上げず、買主との交渉や仲介会社との相談を慎重に進めましょう。

3-2.臭い対策をしっかりと行う

浄化槽付き物件の売却で見落とせないのが「臭い」の問題です。浄化槽というものを知らない購入希望者が内見に来た際、何かしらの臭いを感じると浄化槽が原因ではないかという印象を持たれる可能性があります。

特に長く空き家にしておくと、下水道が整備された物件でもトイレや水道から臭いが発生することがあります。これは定期的に水を流さないことにより、管内の水が蒸発して下水管などから臭いが上がってくるのが原因です。

そのため、売却物件が空き家となる場合、定期的に水を流すことと、部屋の換気をしておくことが大切です。

3-3.ブレーカーは落とさない

前述したように、浄化槽は電源を入れたままにしておくことが重要です。長期間ブレーカーを落としたままにすると、浄化槽内の微生物が死滅するため、再度、微生物を放流する必要があります。

このほか自然災害などによる停電の場合、長期間にわたり浄化槽のモーターが止まるケースもあります。その場合には復旧後に点検作業をしておきます。正しく対処せずに売却すると後のトラブルに発展しやすいので注意しましょう。

3-4.モーターの振動音対策をしておく

浄化槽のトラブルとして多いのが、モーター(ブロア)の振動音です。エアコンの室外機による低周波音と同様に、室内に響くことで悩まされるケースがあります。これは売却後に買主が居住してから気づく問題なので、事前に伝えておくなどして対応しましょう。

なお、モーターの振動音がうるさいのは、建物の基礎とモーターを置いておく土台が繋がっていること原因である可能性があります。モーターの土台を建物の基礎から独立させることで、振動音はある程度軽減されます。また、モーターの下に防振マットを設置するなども防音対策として有効です。

3-5.更地にする場合、浄化槽は撤去する

下水道が整備されたことにより浄化槽を撤去せず埋没させた場合、浄化槽を埋没させたまま新たな建物を建設すると、不等沈下のおそれがあるため注意が必要です。不等沈下とは、地盤が均等に沈下せずに建物が傾く現象です。

また、売却後の工事で埋設物が出るたびに契約不適合責任を負うことを回避するため、埋没させていた浄化槽を撤去した際や、ほかにも埋設物がある可能性があることを前提として、買主希望者にはしっかりと申告し、売買契約書に記載しておくことが大切です。

まとめ

浄化槽は臭いの発生元となったり、撤去費用の負担をめぐって買主と揉めたりするケースがあります。

また、地盤沈下の原因にもなるので売主には告知義務があり、これを怠った場合は損害賠償を請求される可能性もあります。

浄化槽付き物件をスムーズに売却するためには、浄化槽の適切な維持管理方法や撤去費用、売却手順を知っておくことが重要なので、トラブルを避けるためにも事前にしっかりと確認しておきましょう。

※この記事は金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」より転載された記事です。
【元記事】https://hedge.guide/feature/septic-tank-property-sale-procedure-precautions.html

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Livhub 編集部

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