土地活用の中でも大きなリターンが見込めるサービス付き高齢者向け住宅経営は、これから高齢化社会が加速していく中で注目を集める活用方法の一つです。
高収益である一方、初期費用が高く失敗した時のリスクの高い土地活用方法であるため、運営におけるメリット・デメリットを知っておきましょう。有料老人ホームとの違いや運営方法3つと併せてご紹介していきます。
1.サービス付き高齢者向け住宅とは?老人ホームとの違いと運営方法
高齢者向けの賃貸住宅である「サービス付き高齢者向け住宅」は、高齢化社会の影響で有料老人ホームや老人保健施設とともに年々増加しています。
サービス付き高齢者向け住宅とは一体どのような施設なのでしょうか?概要と有料老人ホームとの違い、運営方法をご紹介します。
1-1.サービス付き高齢者向け住宅とは
サービス付き高齢者向け住宅は高齢者の賃貸住宅の一種で、高齢者住まい法の改正により創設された介護・医療と連携し、高齢者の安心を支えるための「安否確認(状況把握)サービス」と「生活相談サービス」が必ず付いているバリアフリー構造の住宅です。
60歳以上の高齢者または要介護認定を受けた60歳未満の方が対象で、介護や生活の補助・食事提供といった生活支援サービスが必要な場合にはオプションで申し込み利用する事ができます。
国土交通省・厚生労働省は「サービス付き高齢者向け住宅」の自治体への登録制度を実施しており、登録を行うことで運営情報が公開され、補助金制度や税制優遇の措置をうけることができます。
サービス付き高齢者向け住宅の登録制度に登録するためには以下の要件が必須となります。
- 床面積は原則25㎡以上、便所・洗面設備等の設置、バリアフリーの住宅
- ケアの専門家が建物に常駐し、状況把握サービスと生活相談サービスを提供する
- 高齢者が安定して住まいを確保するための契約であり、前払家賃の返還ルールといった高齢者を契約上守るための措置が講じられている
民間の高齢者向けの賃貸住宅といえば有料老人ホームがありますが、有料老人ホームは介護が必要な方が対象、サービス付き高齢者向け住宅は介護が必要でない方も入居が可能であるという違いがあります。
1-2.サービス付き高齢者向け住宅、3つの運営方法
サービス付き高齢者向け住宅には一括借り上げ方式、委託方式、自己管理方式の3つの運営方法があります。
一括借り上げ方式
一括借り上げ方式は、オーナーが自身の土地に自ら建設したサービス付き高齢者向け住宅を業者に貸し出し経営を委託する方法です。
業者に手数料を払う必要があるため、他の方法より収益性は低くなりますが経営が不要、空き室リスクが無いというメリットがあります。
委託方式
委託方式は経営やサービスの一部を業者に依頼する方法で、例えば入居者募集やメンテナンスは自らが行い介護サービスを介護業者に委託、土地活用業者に入居者や建物の管理を委託し後は自身で経営等委託の範囲や業者は様々です。
一括借り上げ方式よりも収益性は高くなりますが、空き室リスクを負い経営能力が必要となります。一方で入居率が高いと収入も大きくなります。
自己管理方式
自己管理方式はオーナー自身が経営のすべてを行います。外部への委託料が発生しないため一番収益性が高い方法となります。
全ての業務を自己管理で行う反面、業務の負担も大きくなります。自治体からの行政指導への対応、入居者への安否確認と生活相談サービスの提供、人材の確保等の業務に加え、介護サービスを提供する際は介護の質や人材不足である介護士の確保等が課題となります。
2.サービス付き高齢者向け住宅運営のメリット・デメリット
サービス付き高齢者向け住宅には需要が高く補助金や税制優遇がある一方で、初期投資費用が高くハイリスク・ハイリターン、他用途へ転用しづらいといったデメリットがあります。
2-1.サービス付き高齢者向け住宅のメリット
まずはサービス付き高齢者向け住宅のメリットについて見て行きましょう。ここでご紹介するのは下記の2つです。
- 高齢化社会に向けて需要の増加が見込まれる
- 補助金や税制優遇がある
それぞれ詳しく見て行きましょう。
高齢化社会に向けて需要の増加が見込まれる
太陽光発電や駐車場経営等土地活用には様々な方法がありますが、高齢化社会が進む中でサービス付き高齢者向け住宅の需要は高い水準が見込まれます。
内閣府が発表した高齢化の推移と将来推計は以下の通りになります。
※内閣府「高齢化の状況」より引用
高齢化に伴いサービス付き高齢者向け住宅への入居希望者も増加していく事が予想されます。
有料老人ホームや介護老人保健施設は介護が必要な人が対象ですが、「ある程度身の回りのことはできるが、独りで暮らすのは不安」「今は元気だがゆくゆくは誰かのお世話になるかも」といったケースではサービス付き高齢者向け住宅への居住を希望する方も少なくありません。
高齢化率が高まる中、高齢者住宅にも多様性が求められますので民間の施設で様々なサービスを提供できるサービス付き高齢者向け住宅は事業として期待が高まります。需要が保たれる事で空き室リスクは低くなり、損失が少なくなる可能性が高くなります。
補助金や税制優遇がある
国では高齢者の居住の安定を確保することを目的に「サービス付き高齢者向け住宅」の補助金制度や税制優遇の措置を行っています。
補助金制度は自治体により金額が異なりますが、東京都では年に1回サービス付き高齢者向け住宅整備事業の補助事業を実施しており、一定の条件を満たした場合新築の場合一戸当たり建設費の10分の1(上限額120万円)、改修の場合一戸当たり改修工事費の3分の1(上限150万円)を支給します。(東京都「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」を参照)
加えて医療事業所、介護事業所において提供される各サービスが効果的に提供される体制が整っている場合や夫婦二人の居住スペースを確保できている基準を満たした住居に加算補助として数十万円の支給を行っています。
さらに固定資産税・不動産取得税の税制優遇措置があります。下記の図は国土交通省による不動産取得税の概要資料です。
※国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅供給促進税制の概要」より引用
ただし、補助金と同様にこれらの税制優遇措置も年単位で見直されています。税制優遇制度の適用を検討する際は該当する時点での確認をするようにしましょう。
2-2.サービス付き高齢者向け住宅のデメリット
一方、サービス付き高齢者向け住宅にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。ここで取り上げているのは下記の3点です。
- 初期投資額が大きい
- 他用途へ転用しづらい
- 法改正・制度改正の可能性がある
こちらもそれぞれ見て行きましょう。
初期投資額が大きい
サービス付き高齢者向け住宅は、床面積が原則25㎡以上、便所・洗面設備等の設置、バリアフリーの住宅という規定があり、広い土地に大きな建物、設備費用と初期費用が高額になります。
駐車場・コインランドリー・トランクルーム経営等の土地活用に比べ初期費用がかさんでしまいますが、投資額が大きくなることでリターンも増加する傾向があります。
入居費用は全国平均で月額10.5万円となっていますので、10戸で満室の場合は毎月約100万円の収入が見込めることとなります。土地活用の中ではハイリスク・ハイリターンの事業であることを念頭に置いておきましょう。
他用途へ転用しづらい
サービス付き高齢者向け住宅の経営を休止・または廃止する場合、他の用途への転用が難しく建物だけが残ってしまう可能性があります。
バリアフリー設備や高齢者向けの間取り等高齢者を意識した作りとなっており建設費用が高額であるため、通常の賃貸住宅に転用した場合十分な利回りが期待できない、初期費用を回収できない可能性があります。
受け継いで貰える事業者を探すことになりますが、見つかるまでの間ローンや固定資産税を払い続けなければいけません。
法改正・制度改正の可能性がある
上記で紹介した補助金・税制優遇制度は2020年8月時点の制度であり、今後制度改正や財政状況によっては減額・打ち切りといった可能性があります。
高齢者住まい法は2001年に創設された制度で、これから医療・介護の状況が変わる事で改正される可能性がありますので、経営も先が見通せない面があります。
3.サービス付き高齢者向け住宅運営の注意点
サービス付き高齢者向け住宅は土地活用の中でもハイリスク・ハイリターンの事業経営となります。一括借り上げ方式にすることで介護や経営のノウハウが無い状態でも運営は可能ですが、収益や利回りに関しては始める前にシミュレーションを行いましょう。
また立地するエリアでの高齢者の人口や医療機関へのアクセスの良さ、人材の確保も重要となってきます。上手くいけば安定した家賃収入を得ることができますが、経営が思わしくない場合数億円のローンを抱える状況に陥ってしまいます。
サービス付き高齢者向け住宅のメリット・デメリットを把握し、収支計算や需要が見込める物件か等を見極めた上で経営に踏み切りましょう。
最大7社から提案が受けられるHOME4Uの土地活用サービス
HOME4Uの土地活用サービスでは、マンション経営やアパート経営、駐車場経営、賃貸併用住宅、大規模施設など土地の活用方法を選択することで、最大7社からの収益最大化プランを比較することができます。
ここまで解説したように、サービス付き高齢者向け住宅は収益性が高くメリットの大きい土地活用方法ですが、初期投資の大きいリスクの多い投資方法です。実際に投資を始める前に、その他の土地活用方法と収益性や初期費用などを比較し、慎重に検討してみましょう。
まとめ
サービス付き高齢者向け住宅には3つの運営方法があり、経営・管理にどの位携わるかで収益性が変わってきます。
初期費用が高額になりがちですので、自治体の補助金や税制優遇を上手に活用していきましょう。法改正や制度改正の可能性がありますので、利回りや収益をシミュレーションし把握したうえで運営に踏み切りましょう。
この記事でメリット・デメリットを知り土地活用の知識として役立てていきましょう。
※この記事は金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」より転載された記事です。
【元記事】https://hedge.guide/feature/land-utilization-service-elderly-housing.html
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